ヴァンパイヤ・ブラッド・8
ヤマトと太一を助け出してから、数日の間、平穏な日々が続いた。巷では怪獣騒ぎがニュースで取り立たされ、連日ニュースの時間を独占しているが、自分には関係の無い事だと割り切り、タケルは平穏な日々をまったりと満喫していた。
それから数日後、タケルとしては出来れば会いたくない人物が、恩人と呼べる人と一緒に自分の家に訪れた。
恩人と呼べる人である遼に、開口一番に言われた事を理解するのに、そんなに時間は掛からなかった。遼の言った事を理解するに連れ、この平穏な日常に別れを告げる日が来たんだと、半ば諦めの様な状態でタケルは悟り、受け入れながらも、この場所に入れるのも残り三日となったが、タケルは普段通り学校に通っていた。大輔とは先日の出来事を境に仲の良い友人と言う間柄になり、満足の行く日々だった。
それから二日後、タケルが日本にいる最後の一日になった時、最後の日も一緒に帰ろうと、大輔を探すが、大輔の姿はどこにも無かった。慌てて下駄箱まで行ってみるが、やはり、大輔の姿は無く、校庭まで行って大輔と同じサッカークラブに所属し、放課後に一緒にサッカーをしているクラスメイトに聞いてみるが、知らないと言う、しょうがないから帰ろうかと思ったのだが
別の生徒が「なんか、大輔の事を一乗寺君が訪ねてきて、それで大輔連れて二人でどっか行ったぜ」
その事を聞いて、焦りに似た複雑な胸騒ぎを覚えたタケルは大輔を探す事にした。下駄箱を見ると、大輔の靴は無かった。という事は外にいる筈、昇降口を出て、校庭を見渡すと、視界の隅に二人の姿が写った。
二人はタケルから大分離れており、タケルとてヴァンパイヤとしての視覚能力を解放して確認した程だ。大輔と一緒にいる人物は、先日、自分の家に訪れた二人の人物の内の一人、一乗寺賢だった。タケルは気配を消して、校庭の片隅にいる二人の傍にそっと近付いた。大輔に声を掛けようかと考えたが、大輔と賢、二人の雰囲気にとても声を掛けられる雰囲気ではなかったので、二人の会話に能力を解放した聴覚神経を傾ける。
「ごめんね、呼び出したりして」
「いいよ、それより、どうしたんだよ?突然、こんな所まで来て」
「実は、大輔に伝えておきたい事があったんだ・・」
物陰からコッソリと様子を伺うと、そこには決意を秘めた瞳で大輔を見つめる賢、その黒瞳に見つめられる大輔がいた。大輔の方は普段とは違う賢の様子に僅かながらに戸惑いながらも向かい合っていた。
「実は・・・大輔の事が・・・好きなんだ!!」
賢に似つかわしく無く大きな声を発していた。
「・・・あんな事しておいて、こんな事言うのは・・・勝手だと思う・・けど・・・・どうしても・・この気持ちを君に伝えたかった。」
次の言葉を発する時には、先日あった事から来る気不味さに、大輔から視線を反らし、声も沈めながら、言葉を紡いだ。
「えっと・・あの・・俺・・・男なんだけど」
「関係無いよ・・・僕は・・本宮大輔って言う・・・たった一人の人間が好きなんだ」
そう言いながら、賢は大輔に歩み寄り、大輔の顎に手を添える。
そして自ら瞳を閉じ、大輔の唇に自身のを重ねようとした・・・
その瞬間からタケルは目を反らす事が出来なかった。
バンッ
大輔の両手が賢の胸を突き飛ばす。
「ゴメン・・・賢の事・・そういう風には見れないんだ・・ホンットゴメン!」
そう言って、乱暴に頭を下げると、大輔はその場から逃げる様に走り去った。
タケルの存在にも気付かずに、脇を通りぬけ、どこかへと走り去ってしまった。
タケルも、この場には居れないと思い、そっとその場を後にする。
「分ってたんだ・・・君の心の中に僕は存在しないって事は・・・」
そう言って賢は空を見上げた。その黒瞳からはつぅっと涙が流れた。
タケルは、静かに家路へとついた。
「ようっ、どこ行ってたんだよ?」
自分の家の玄関に寄り掛かる大輔を見て、茫然とするタケル
「大輔君こそ、どうしたの?・・・もしかして待っててくれたの?」
「ぉ、おう」
頬を赤く染めながら頷く大輔
「今日で最後だからね、それで何の用?あの事だったら、絶対に駄目だよ?」
「うっ・・・」
図星を突かれて押し黙る大輔
「それじゃあ、僕は準備があるから」
そう言って大輔をどけて、何事も無く玄関の鍵を開けて家の中に入ろうとするタケル
だが、服の裾を掴まれて、振り返る。
「大輔君」
困った様に掴んだ相手の名を呼ぶタケル
「・・やな・・よ・・・」
大輔の方を振り返ると、大輔は俯いて肩を震わせていた。
「大輔君?」
名前を呼ばれて顔を上げる大輔、その瞳は涙に濡れ、上目遣いでタケルの事を見ている大輔
「いやなんだよっ!お前がいなくなっちまうなんて!」
タケルの視線は自然とTシャツから除く首筋に落ち、そこに流れる大輔の血管が浮き出てくる。
「ウ・・ウッ・・・ウウウッ・・・」
タケルはヴァンパイヤとしての本能を抑えようするが、ここ数日抑えていたタケルの理性は限界に来ていた。
「タッ、タケル!」
ガクッとその場に膝を付き、苦しそうに呻き出したタケルに、大輔は焦りの入った声を掛け、タケルの両肩に手を持っていくと、その手首を捕まれた。
俯いていたタケルが顔を上げると、そこには白目を血の色に染め、蒼い瞳は血走っていた。
「はぁ〜」
大きく口から息を吐き、悪魔のごとき笑みを浮かべるタケル、変貌したタケルは大輔を家の中に押し込む様に入れると、玄関のすぐ脇の白い壁に大輔の両手を自身の両手で捕え、十字架の様に貼り付け、大輔の首にタケルの牙が迫る。
「タッ、タケル!!」
大輔の呼び声にタケルの理性が覚醒する。
「うあああああっ」
タケルは弾かれた様に大輔から離れると、膝を付きコメカミに両手を当てて、呻き声をあげる。
「はあはあはあ・・・・これで分ったでしょ、僕が大輔君と一緒に居られない訳が・・・僕は化け物なんだよ」
タケルは立ち上がると、大輔には目もくれず、部屋に行こうとするが、再び服の裾を捕まれた。
「いやなんだよっ、お前がいなくなるなんて・・・お前がどんな奴だろうと・・・俺・・お前の事が・・だから」
凄く小さな声だったが、タケルには確かに聞こえた。
「大輔君!・・・そ、それ本当?」
驚き振り返るタケル、だが、大輔は耳まで真っ赤に染めて俯きながら、小さく首を縦に振る。
タケルは大輔を優しく抱き締める。
「大輔君」
大輔の名を優しく呼ぶと、大輔は顔を上げた。
「好きだよ・・・ずっと、こうしたかった」
その唇に自身の唇が重なる寸前に、そっと囁いた。触れるだけの唇が終わった後、タケルの口は大輔の首元へと落ちて行った。そして、その口元には、キラリと光る牙があった。
{しょうも無い後書き、その2}
はい、どうも、とうとう、終りましたぁ〜、ヴァンパイヤ・ブラッドでしたぁ〜、どうもぉ〜今まで読んでくださった方、お付き合いくださった方、ありがとうございます。なんだこの終わり方は?って感じがしますが、兎にも角にも完結です。長かったです。書いていて長かったです(シミジミ)この話はサイト運営を始めたばっかの頃に、ヤマ太の方を始めて、そして書いている内に複線というか設定というか微妙な所で、タケ大のお話も大体組み上がってしまった為、書き始めたという、実に良い加減で、当初の書く予定には無かった作品でしたが、皆さんDOUでしたか?それでは、今日もしょうも無い後書きを終わります。次の連載でまた会いましょう、良かったと思った方、感想を掲示板でもメールでも良いので下さったら、管理人としてこれ以上の喜びはありません、それでは、失礼します。