ヴァンパイヤ・ブラッド・7

 

それは、あっという間の出来事だった。

自分の目の前で兄と兄の親友がさらわれて行ったのは、そして今、自分が抱きかかえているのは、今は親友という立場にいるが、心を寄せる人物が自分の首に手を回し、絶対に離さないと言わんばかりに力一杯しがみ付いている。

 

そして後ろを振り返れば、そこには何対もの手を持つ、キメラモンと呼ばれていた異形の怪物が空を飛び、自分目掛けて追っかけてくる。キメラモンは主の命令で手の中にいる人物・・・大輔を絶対に傷つけるなという命令のお陰で、派手な攻撃されないで済んでいるが、ヴァンパイヤとしての能力はフルに解放しているが、体力には限界がある。今はまだ大丈夫だが、このキメラモンに追いつかれない程度の速度で走らないといけないので、いずれは尽きる。

 

(どうすれば・・・・)

タケルが考えていると

「タケルっ!」

不意に手の中の人が首に回した手を緩めて、自分の顔を覗き込んでいた。

「ん?・・どうしたの?」

「あれ」

大輔の視線の先にあるのは、高速移動しているタケルの後ろを追走する年の頃は太一やヤマトと変わらないと思われる。一人の短めの茶色い髪を逆立てた男の姿があった。

 

「おいっ!」

その男は走っているタケルの隣まで来ると、声を掛けてきた。

「助けてやるから、一旦止まってくれ」

そう言われるが、この状況で止まる訳には行かず、タケルは走る速度を落とさなかったが

「・・・大丈夫だから止まれっ!」

男の声には、太一と同じように不思議な力があった。タケルは徐々に速度を落とすのと同時に相手も速度を落とし、その場に止まった。

「ふぅ〜、疲れたっと」

男は両膝に両手を置いて、大きく息を吐くが、呼吸は一切乱れていなかった。

 

タケルを追いかけてきたキメラモンは、立ち止まったタケルを見て、ようやく観念したのかと言わんばかりに、大きく雄たけびを上げると、タケルに近付いてきたが

「おっと、悪いが、そうはいかねえんだよっ」

そう言うと、タケルとキメラモンの間に立ちふさがると、背に背負っている大きな剣取り出した。

「自己紹介が遅れたが、俺の名は秋山遼、お前がもし人に危害を加えないヴァンパイヤなら、お前の味方だ」

タケルの方に顔だけ振り返ると、男はそう言って口元に不適な笑みを浮かべる。

 

「さってと、賢の憎しみの具現体とも言えるお前だ。悪いが消えてもらうぜ、お前は賢のパートナーに相応しく無いと思うからな」

遼がそう言って剣を構えると、剣の刃が白い光に包まれる。遼は大きく跳躍すると、一気にキメラモンの顔前まで飛び上がり、キメラモンの顔前で、剣を大きく縦に振り下ろすと、キメラモンは一瞬で縦に切り裂かれ、黒い粒子となり四散した。

 

「さあ、行くぞ」

遼が剣を背中の鞘に仕舞いながら、顔だけタケルの方に振り返り言う

「えっ・あっと、どこに?」

タケルが余りに突然色々な事が起こりすぎたので、戸惑いながら聞き返す。

「お前の兄貴を助けにだよっ、俺の事を今深く説明してるだけの時間は無いだろ、とりあえずは味方と思ってくれて良いぜ」

「・・・・・」

タケルは突然現れた。このドコと無く軽薄な感じの男を信用できずにいた。

「俺を信用しないってのは、そっちの勝手だし、突然現れた奴に味方だから信じろって言われても信用出来ないのは分るけど、お前にお前の兄貴の居場所が分るのか?」

「そっ、それは?」

「じゃあ、決まりだな、行くぞ、着いて来い」

今は選択肢は無かった。タケルは諦めて男の後についていく事にした。

 

 

{しょうも無い後書き}

はい、ヴァンパイヤ・ブラッド7話でした。っていうか短っ、そして「キメラモン弱っ」って思った人、そこは遼さんが強すぎるって事でお願いします。そして、ここまで引っ張ったヴァンパイヤ・ブラッドも、とうとう次で最終話です。一応、次で終わる予定です(あくまで予定にして置きます。狂った時ように)そう、つまりはヴァンパイヤシリーズとうとう完結です。

途中で、この話更新停滞させてすいません、そしてお付き合いくださった方、ちょっと早いですが、ありがとうございます。このヴァンパイヤシリーズはヤマ太の方が意外と好評で、ついでだからタケ大もと思って始めたんですが(爆死)ヴァンパイヤ・ナイトが好きな方が、掲示板やわざわざメール等でタケ大も好きなので楽しみにしているという感想下さった方、本当にありがとうございます。これの連載終わったら、とりあえず、長編と裏の裏での新たな連載を始めます。そして裏は思いつき更新(エロ書きたいなぁ〜っと思った時更新)という今まで通りに戻りたいと思います。しかし、こうして振り返ると、私の書く表の文は完全なるパラレル設定が多いですね、裏は原作の合間や最終回後のお話に近いんですけどね、それでは今日のおそらく誰も見ていないであろう、後書きを終わります。