ヴァンパイヤ・ナイト8
「うううううううっ」
ヴァンパイヤの本能に支配されたヤマトは、白目までが赤く染まった目で、太一を捉えると、前傾姿勢を取り、ゆっくりとした足取りで太一に迫った。
「さあ、早く彼を殺さないと、君が死ぬ事になるよ?」
賢は冷淡に言い放つが、太一は微動だにしない
「何をしている?死にたいのか!?」
賢は困惑を隠しきれない様子で言い放つ
「タ・・・イチ・・」
変貌したかに思えたヤマトの口から、太一の名が紡ぎ出された。
「バカな!!そいつは、もうヴァンパイヤの本能に支配されているはずなのに!!」
賢は狼狽し、牢屋の格子を掴む
「お前には分らねえよ」
太一は、賢に背中を向けたまま言うと、ヤマトの両肩に手を置き、自分の方に抱き寄せる。
「良いぞ、ヤマト」
太一は、両目を瞑り、ヤマトの顔を自分の首筋に引き寄せる。
「タ・イチ」
ヤマトの赤く染まった瞳から、涙が流れ落ち、顔は深い悲しみと苦痛に染まっていた。
「そんな顔すんなよ」
太一は、一度ヤマト肩に置いていた手を突き出し、ヤマトの顔を覗き込み、苦笑を浮かべながら言う
ヤマトはヴァンパイヤの本能に支配されまいと、抵抗をした結果、意識を保つ事には成功したが、本能だけはどうする事もできず、ヤマトの体は今、生存の本能に支配され、生存の為に太一の血を強烈に求めている。その為、ヤマトにとっては、地獄だった。最愛の人物を自分が殺していく様を、まざまざと見せ付けられているのだから
「タイ・チ・オレ・・を・・・ころし・・て」
ヤマトは、赤い瞳から、涙を流しながら言う、自分の体を止めようにも、止める事ができず、ヤマトは深い絶望を味わい、このままでは、自分が太一を殺してしまうと言う現実を曲げる為、太一に自分を殺すように懇願するが、太一は穏やかな笑みを浮かべたまま、ヤマトの顔を、もう一度自分の首筋に引き寄せる。
「そんな顔するなよ、悪いのは、お前じゃないんだから、さあ、飲めよ」
太一は、目を瞑り、自分の血を飲ませる為に、ヤマトの背に手を回し抱き寄せる。
「タイ・・チ」
ヤマトの顔は、悲しみに染まっているが、本能に支配された体は、どうしようもなく、
絶望と言う名の、感情を顔に貼り付けたヤマトは、太一をゆっくりと押し倒す。
太一の首筋に、ヤマトの牙が迫る。
「ぐあああっ」
突如、苦鳴の声が上がる。
太一は、目を開けると、ヤマトの手には、先程、賢が太一に投げてよこした。短剣が握られていた。
そして、その短剣は血に染まり、ヤマトの太ももに突き刺さっていた。
ヤマトは、自分の本能に支配されない為にした事だった。
「たいち・・お前に合えて良かった・・・おかげで・・・にんげんを・・嫌いにならずに済んだよ」
ヤマトは、そう言うと、太一の胸に手を置き、太一の事を突き放すと
「じゃあな・・・」
ヤマトは、穏やかに微笑むと、自分の両手で短剣を握り、今度は胸を突き刺すつもりで、胸の前に突き出した。
「ヤマトーーーー!!!」
太一は叫びながら、ヤマトに駆け寄り、なんとか、ヤマトの手を掴む事に成功したが、ヴァンパイヤであるヤマトの力の前には無力で、短剣はヤマトの胸に深々と突き刺さった。
「ぐああっ」
ヤマトは、胸に短剣を突き刺したまま、その場に崩れ落ちた。
「ヤマト!ヤマト!!」
太一は、ヤマトを抱き起こし、ヤマトの名を叫び、ヤマトの顔には、太一の涙が落ちた。
「たい・ち・・・」
元々白い肌の、白い顔を、血を失った事により、更に蒼白に染め、ヤマトは、太一の名を呼ぶ
「やまとぉ」
ヤマトの名を呼ぶ、太一の顔と声は涙に濡れていた。そんな太一の頬にヤマトの右手が伸ばされる。その手は、弱弱しく震えながら、太一の頬に添えられる。
「太一」
「やまとぉ」
太一は、泣きながら、ヤマトの手に自分の手を添える。
「太一、無事でよかった」
ヤマトの目は、普段のターコイズブルーの目に戻っていた。顔には、穏やかな笑みが浮かべると、太一の頬に添えられていた手が床に落ちた。
「ヤマト!ヤマトーーーー!!」
太一は、ヤマトの名を呼び、ヤマトの体を揺するが、返事は無かった。
「なんでだよ!なんで?そんな化け物の為に、危険を冒す事が出来る!!なんで?」
呆然としていた賢が、声を上げる。賢は完全に困惑しており、コメカミを両手で押さえ、頭を激しく振っている。その時、外へと通じる地下室の扉が荒々しく開き、扉の向こうから、三人の人間が入ってくる。その内、二人は、知った顔だが、残りの一人は、まったく知らない顔だった。
「太一先輩、助けに来ました!!」
「太一さん、お兄ちゃん」
大輔とタケルが、地下室の中に踊り込むと同時に、大輔とタケルの声が響き渡る。
「お前達、どうしてここに?キメラモンを倒したというのか?お前が」
賢は、タケルを見て驚愕の表情を浮かべるが、遅れて入ってきた。もう一人の男を見て、納得したような表情を浮かべるが、
「遼さん、どうしてあなたが?」
賢は、すぐにまた、驚愕の表情を浮かべる。
「久しぶりだな、賢」
遼と呼ばれた太一達と同年代の、茶色い髪を逆立て、背に巨大な剣を背負った一人の男は、賢を見ると、無表情に言い放ち
すぐに牢屋の中の太一達に視線を移動させ、牢屋の中のヤマトを見て、
「ヤバイな、このままじゃ、あいつは死ぬ」
顔に、僅かに焦り気味の表情を浮かべる。
「お兄ちゃんが、どうすればいいんですか!?どうすれば?お兄ちゃんを助けられるんですか!?」
タケルは、自分より、僅かに背の高い、相手を見て、普段の冷静さを失った、取り乱した様子で尋ねる。
「これを使いな」
相手は、タケルに、鉄の筆箱の様な物を渡し、タケルは、中を確認すると、赤い液体の入った注射器が一本だけ入っていた。
「高濃度の血液製剤だ。早くあいつに打ってやりな」
「太一先輩、これをヤマトさんに」
タケルの脇から、大輔が、鉄の筆箱をひったくると、太一に向って、床の上を滑らした。
「そいつの胸に刺さった。短剣を抜いて、そいつを首筋に打ってやりな」
相手は、太一に目をやり、そう言うと、賢に視線を戻す。
「ヤマト、ちょっと痛いかも知れないけど、我慢しろよ」
太一は、意識の無い、血の気を失い、蒼白な顔を浮かべているヤマトにそう言うと、太一は、ヤマトの血に塗れの胸に左手を当て、右手で短剣の柄を握り、短剣を引き抜くと、短剣の刺さっていたヤマトの胸の傷口から、更に血が流れ出したのを見るが、太一は構わずに、ヤマトの首筋に、注射を打つが、ヤマトからの反応は無かった。指一つ動かさずに、相変わらずの、蒼白な顔を浮かべ、その場でグッタリとしていた。
「ヤマト!ヤマトーー!!目え覚ませよ、ヤマト!!目え開けろよ!!」
ヤマトの名を呼び、ヤマトの体を揺するが、ヤマトからの返事は、先程同様に無かった。
「ヤマトーーー!!」
太一の叫び声が、地下室に響き渡ったが、答える声は無かった。
「間に合わなかったんだ」
遼は、一人、事実を口にした。誰も認めたくない、事実を
後書きと言い訳を・は〜い、KYOでぇ〜す。凄まじく遅くなってしまいましたね、お待たせした皆さん(いるのかな?)ごめんなさい、本当に本当に遅くなってしまいましたね、少し告知を、今度、日記でも、告知する予定なんですが、私のサイトは、クリスマス企画や、期間限定アップ等は、一切しません、なぜなら、書いた小説は、皆さんに自由に閲覧してもらいたいからです。人様のサイトや、サイト運営方針をとやかく言う気はありませんが、限定アップをしたりして、読めなかった人がいたりすると、私は意地悪をしてるみたいで嫌なのです。読めなかった人が可愛そうじゃないですか(ちょっと熱弁)よって、期間限定アップ等は、いたしません、その代わり、クリスマス前は、一気更新をしたいと思います。では、ここらで失礼いたします。求む感想書き込み(切実)