ヴァンパイヤ・ナイト6

ガシャーン

ガラスが割れ、何者かが、ヤマトの家の中に入ってくる足音がする。

「ヤマト!!」

「ああ、分かってる」

太一は跳ね起き、ヤマトに声を掛ける。

「とりあえず、大輔達を安全な場所に避難させないと」

太一は我が身より、後輩と親友の弟の心配をする。

「分かってる。じゃあ、俺が相手の注意を引き付けるから、太一はタケル達に、場合によっては、警察に電話するよう伝えてくれ、タケルだったら、だいじょうぶだと思うけど、多分突然の事に、びっくりしてるだろうから」

「分かった」

太一とヤマトは部屋の扉を開ける

 

その頃・タケルと大輔は

「なっ!なんだ!なんだ!」

「落ち着いて大輔君、僕が様子を見てくるから」

タケルは、上半身を布団から起こし、驚いている大輔を宥める。

「バッ、バカにすんな!!ビッ、ビッ、ビックリしただけだ!お、俺も行くぅ!!」

「クスッ、はいはい、分かったよ、じゃあ、行こう」

タケルと大輔は部屋の扉を開ける。

タケルが扉を開けると、二人の背中が眼に入った。

「お兄ちゃん」

「タケル!隠れてろ!」

「えっ・・どうしたのさ?」

ヤマトが振り返らずに叫ぶ、

 

ヤマトと太一は、廊下に出て、リビングの方に目をやり、視線を釘付けにされた。リビングからベランダに出る為の、ガラス戸が粉々に割れ、床に飛び散っているのは、予想できた事態だが、だが、その割れたガラス戸を通り、入ってきたと思われる者を見て、ヴァンパイヤの血を引くヤマトも、ゴクリと唾を飲んだ。太一もヤマト同様に、体が得体の知れない者に対しての、恐怖と緊張で動けずにいた。

ベランダのガラス戸を割り、侵入してきた相手は、二本足で立ってはいるが、身の丈3m前後の、暗闇に移るシルエットを見る限り、人間ではなく、腕の二の腕より、前腕の方が、明らかに太く、その他の、体の部位を見ても異様な作りになっており、人間ではない事は、明らかだった。

 

時間にして、一分にも満たない時間だが、動く事が出来ずに固まっていると、後ろの扉が開き、タケルと大輔が出てきたのだった。

ヤマトは、緊張を振り解くかのように叫び、何とか体が動く事を確認し、ヴァンパイヤとしての、能力を解放して、動ける状態を作り、相手に向って、何か言おうとしたが、

「お前はいったい何者だ!?」

太一が、ヤマトの前に進み出て、ヤマトの言おうとした事と、同じ意味合いの言葉を相手に投げつける。

 

「おや?可笑しいな、ここは、ヴァンパイヤの住処の筈なのに、人間が二人もいるなんて?どういう事だ」

返ってきた返事は、少年にしては低くいが、男としては、まだ声変わりしていない声だった。しかも、その声の主は、リビングに立っている異形の肩にのかっていた。

 

「この声、お前、賢だろ!どうして、こんな事するんだよ?」

突然、太一達の後ろにいた大輔が、異形の肩に乗っている人物に声を掛ける。

「大輔!なんで君がここに?」

異形の肩に乗っていた人物も、困惑しているらしく、肩から飛び降り、暗がりで良く分からないが、マントをしているようだった。顔に掛けている。バイザーのような物をいじる。

「どうやら、大輔と、もう一人は、人間らしいな、後の二人は、忌々しい、ヴァンパイヤか、フンッ」

賢と呼ばれた少年は、大輔と太一の事を、呼ぶ時は、少し憮然としているが、普通の態度で呼ぶが、ヤマトとタケルを呼ぶ時に言った、ヴァンパイヤと口にする時は、虫けらと同じような扱いで呼ぶ

 

「さて大輔、それと、もう一人の人間の方(かた)は、大人しく、この場から離れてください、じゃないと、危ないですよ、今から僕は害虫駆除をしなくてはならないので、どうか、今日ここで見た事は、ご内密に願います。ご理解いただけたら、お家にお帰り願えますか?」

大輔に賢と呼ばれた少年は、大輔と太一に向って、丁寧すぎる位、丁寧な態度で、この場から去るように促す。

 

「おいっ、害虫って誰の事だ?俺には、害虫なんて、どこにも見あたらないんだけどなぁ」

太一は、相手がヴァンパイヤの血を引く、ヤマトとタケルの事を、害虫と言ってるのを知っていながら、わざとシラを切ってみせる。

「そこに突っ立ってる金髪の二人の事です。人類に仇なす。害虫、ヴァンパイヤの血を引く、忌々しい虫けら共です。どうか、今日は、お家にお帰りになり、今日の事をお忘れになって下さい」

 

「へぇ〜、ヤマトとタケルが、害虫ねぇ、俺には、そうは見えないぜ、二人の足の数は二本だし、どこにも触覚なんて生えてないしなっ」

太一は、賢の神経を逆撫でする。

「くっ・・え〜い!もうやめだ!スティングモン、そこにいる。二匹のヴァンパイヤを仕留めろ!!一緒にいる人間の内、背の高い方は、どうなっても構わん、ただし、大輔には、毛筋ほどの傷もつけるな!いいな」

「賢ちゃん、いいのか?」「構わん!」

どうやら、異形の名は、スティングモンと言うらしく、スティングモンと呼ばれた異形は、賢に確認を取るが、賢は、かなり、頭にきているようで、スティングモンは、両手の前腕から、ピンク色の光刃を飛び出させ、ヤマトに襲い掛かる。

ヤマトは、すぐに自分の前にいた。太一の肩に手を乗せ、安全の為、後ろに引き込むと、高速移動をして、スティングモンへ間合いを詰める。

 

スティングモンは、ヤマトの突然の行動に対しても、慌てる様子は無く、右手のブレードを相手に突き出した。ヤマトは、それを避わし、相手の懐に飛び込むと、両手を使った、掌底を相手の腹部に叩き込もうとしたが、そこにいた筈のスティングモンは、一瞬にして、ヤマトの司会から消え、ヤマトの背後に回っていた。

「バカなっ!」

ヤマトは、驚きの声を上げる。

 

「ハッハッハッ、僕のパートナーのスティングモンは、強いだろう、お前らヴァンパイヤを殺す為に、選び抜かれた、僕のパートナーだからな、ハッハッハッ」

賢は、高笑いを上げ、ヤマトを嘲笑する

ヤマトは、後ろを振り返ると、スティングモンの、右手のブレードが、ヤマトに突き刺さらんと、迫っていた。ヤマトは、ブレードが、自分に向ってくるのを、凝視していたが、その時、スティングモンとヤマトの間に、何かが出現した。

「スティングモン、やめろ!」

賢の声が響き渡る。

 

だが、スティングモンは手の、勢い止める事が出来ず、ヤマトと自分の間に、突然現れた太一に、スティングモンの、右手のブレードが突き刺ささった。かと思ったが、スティングモンは寸での所で、ブレードを前腕に収納でき、太一にブレードが、刺さるのは避けられたが、代わりに太一は、腹部にスティングモンの拳を喰らってしまい、単純な力だけでも、人間以上のを持っているのは、見た目から分かる通り、幾ら寸での所で止めようとしたとはいえ、人間の太一には十分なダメージだった。

 

太一は、ヤマトに背を向ける形で、スティングモンとヤマトの間に割り込み、スティングモンの拳を腹部に食らい、太一はその場に、仰向けに倒れそうになるのを、ヤマトが寸での所で抱き止める

 

「やっ・・まと・・ぶじ・か?」

太一は、よほど、呼吸が苦しいのか、荒い呼吸をしながら、言葉が途切れ途切れになりながらも、ヤマトに尋ねる。

「太一!なんでこんな馬鹿な事をしたんだ!!」

ヤマトは、自分の手の中の太一を怒鳴る。

「負けそう・・だった・・・くせに・・・偉そうな事・・・言う・なよ・・・それに・・しかたねえ・だろ・・・体が・勝手に・・動いちまったん・・・だから・・よ」

「太一っ!」

ヤマトは、太一を強く抱き締める。

「なぜだ!そいつは、人類に仇なすヴァンパイヤなのに!なぜ?そいつを庇った!!」

賢の叫び声が部屋に響き渡る。

「ヴァンパイヤ・・・だから・なんだよ・・こいつは・・こいつなん・だよ・・・おまえ・・には・・・わかんねえよ・・・命を・・命と・・思わない・・奴には・な」

ヤマトの腕の中から、太一は途切れ途切れに答える。

「なにいぃ、貴様!不愉快だ!スティングモン、そいつとヴァンパイヤを捕らえろ!」

「分かった」

 

スティングモンは、太一を抱き締めている。ヤマトに向って、一気に距離を詰め、ヤマト達を捕らえんと、広げた右手を繰り出してくる。太一を抱き締めていたヤマトは、動きが若干鈍るが、何とか、スティングモンの右腕を左側に避わし、スティングモンの背後ん回り、死角に回り込み、距離を取ろうと考えるが、スティングモンは伸ばした、右手の下から、左手を伸ばし、ヤマトに向き直りながら、ヤマトを捕らえる。

 

ヤマトは、自分の肩を一握りで握ってしまう、大きさの巨大な手で、肩を上から囲むように捕らえられ、すぐにスティングモンは、相手の体を中に浮かし、自由を奪う、ヤマトは、太一を抱えている為、両手が使えず、しかも、太一は、今だに、呼吸が苦しいらしく、手の中で、荒い呼吸を繰り返している。そんな太一を離す訳にも行かず、どうするか、ヤマトは考えていると、スティングモンは、左手を右手の上から握りこみ、両手を使って、ヤマトの動きを完全に拘束する。

 

「良くやった。スティングモン、よし、そいつらを連れて、一旦帰るぞ」

「分かった、賢ちゃん」

スティングモンは、すぐにベランダまで移動し、賢の脇で跪く、賢はスティングモンの肩に飛び乗り、

飛び立とうとするスティングモンに、タケルが襲い掛かろうとし

「待て!」

ベランダにいる。スティングモンと賢に声を掛ける。

「タケル、逃げろ!俺と太一なら、だいじょうぶだから、逃げろ!!」

ヤマトは、スティングモンの腕の中から、タケルに向って叫ぶ

「お兄ちゃん、心配しないで、すぐに助けるから、一乗寺賢!お兄ちゃんと太一さんを置いてけ!!」

「そうは行かないな、こいつには、ヴァンパイヤの本性を教えておかないとね、こっちのヴァンパイヤには、それを手伝ってもらうのさ、まあ、それが終わったら、このヴァンパイヤには、死んでもらうがね」

賢は、タケルを嘲笑するかのように、言い放つ

 

「そんな事、させると思ってるの?」

タケルは、口元に笑みを浮かべ、冷ややかに言い放ち、

タケルが、高速移動をし、スティングモンに襲い掛かろうとする。

この時のタケルは、冷ややかな瞳と笑みを浮かべているが、完全に普段の冷静さを失っていた。

「待て!タケル」

大輔は、タケルの肩を寸での所で掴めた、高速移動をする前だったので、掴む事が出来た。

「大輔君、止めないでよ!太一さんとお兄ちゃんが、連れて行かれるのを、黙ってみてろって言うの!」

タケルは急に入った思わぬ邪魔に、らしくなく憤慨する。

「ヤマトさんが言ってただろ!自分達ならだいじょうぶだって!とにかく今は逃げるぞ」

「でも!」

大輔の的確な現状分析眼を見て、大輔の意外な面を発見し、戸惑うタケル

「ほう、仲間割れか、クックックッ、スティングモン、あいつ等を仕留めておけば、後々の禍根が立てていいな、よし、行けキメラモン、ただし、大輔には傷をつけるなよ」

賢がそう叫ぶと、空中に黒い穴が出現した。ベランダのすぐ外に出現した。黒い穴からは、巨大な腕を何本も持った、巨大な異形の怪物が出現した。

 

「頼んだぞ、キメラモン、行くぞ、スティングモン」

賢は、そう言うと、スティングモンは賢を肩に乗せ、ヤマトと太一を、その手に捕らえ、飛び去った。

賢が去ったの後、すぐにキメラモンと呼ばれた、巨大な異形は、ベランダから、骨で出来た一本の腕を差し入れてきた。

「うわあ」

大輔は、堪らず尻餅をつく、

「大輔君、だいじょうぶ?早く逃げて、あいつの狙いは僕だから、さあ、早く」

タケルは大輔を立たせると、玄関に向わせようとする。

「危ないタケル!」

大輔は、タケルを脇に押しのけ、キメラモンの手の前に立ちはだかると、キメラモンの手はピタリと動きを止めるが、どうやら、賢が先程、大輔を傷つけるなと言う命令は絶対らしく、逆らえないらしい、ベランダから、覗いてる瞳が、忌々しそうに大輔を見ている。

 

「タケル!とにかく今は逃げるぞ!ここはヤバイ」

大輔の指摘通り、キメラモンが部屋に突っ込んだ手を、激しく動かした為、もうすぐ、建物が崩れ始めそうだった。

「分かった。」

タケルは、立ち上がり、大輔と玄関から、脱出する。

 

後書き・う〜ん、囚われの、ヤマトと太一にの運命はいかに・・・しかも、カイ大風味も入ってきたし、タケ大なのに、まあ、その点はだいじょうぶだけど(ホントか?)・・・だいじょうぶです!(断言しちゃったよ)・・まあ(汗・・タケ大で書きます。