ヴァンパイヤ・ナイト3

ヤマトは、朝起き、学校に行く準備をするが、どうにも、気分が冴えなかった。昨日タケルと、本を探しに行っても見つからず、確かに、あの本が、誰かに拾われ、読まれたとしても、中身はちゃんと、おとぎ話の様に、書かれているし、フランス語だから、心配は無いのだが、昨日、自分が太一にしてしまった事が、おそらく、今日の放課後までには、クラス全体に広まり、明日には、学年全体に広まり、話しかけてくる奴がいなくなるだろうと思うと、ヤマトの気分は冴えなかった。折角築いてきた。人間関係が壊れ、孤立すると思うと、もう、次の学校に転校したとしても、話し友達や、人付き合いを無くそうとまで考え始めていた。

 

そして、ヤマトは、学校で誰とも会いたくないので、タケルに朝食を作ってやると、いつもより早くに家を出ようとした。

「あれ?お兄ちゃん、もう、行っちゃうの?」

「ああ」

「じゃあ、僕も、今出ようと思っていたとこだから、一緒に行こう、ちょっと待ってて」

「分かった」

ヤマトは、再び席に着くと、タケルの準備が終わるのを待った。すぐにタケルの準備も終わり、家を出た。

 

「じゃあ、お兄ちゃん、僕こっちだから」

「ああ、じゃあ、また後でな」

「うん・・お兄ちゃん、そんなに思いつめちゃ、だめだよ」

「ああ、分かってる」

ヤマトは、背後から掛けられた。弟タケルの励ましに対し、振り返り、そう言うと、お互いの学校に向って歩き出した。

 

ヤマトは、学校に着くと、校門から、サッカー部や、他の運動部が朝練をしているのが目に入り、すぐにヤマトは、太一に見つからないように、その場を後にした。

教室に着いて、運動部以外の生徒が、まだ登校していないのが分かり、ヤマトは机に突っ伏し、眠りに就いた。

暫くして

「おい、石田、石田」

脇から、声を掛けられ、ヤマトは目覚めた。

「もうすぐ、担任来るから、起きといた方が良いぞ」

この学校に来て出来た。話し友達が、机に突っ伏しているヤマトを起してくれた。

「ああ・・わるい」

ヤマトは、頭を無理やり覚醒させ、何気なく太一の方を見てみると、太一もヤマトを見ていたが、ヤマトと目が合うと、すぐに目を逸らしてしまった。

 

それから、ヤマトに対しての、みんなの反応は依然変わる様子がなかった。ヤマトとしては、今日辺りには、後ろから、囁き声が聞こえてくると思ったが、一向にそんな様子も無いまま、四時間目が終り、ヤマトは、お昼を、話友達と、いつものように食べる事になった。ヤマトは昼を手早く食べ終えると、話友達に軽く侘びの言葉を残し、裏庭に行った。昨日の夜、見落としてただけで、実は本が落ちている事を望みながら、だが、そんなヤマトの希望も無残に打ち砕かれ、本はどこにも無かった。

そして、本を探すヤマトを、屋上から、太一が、短眼鏡で、こっそりと隠れて見ていたのに、ヤマトは気付かなかった。

 

そして、昨日、あんな事があったにも関らず、皆のヤマトに対しての態度は、変わらないまま、一日の学校生活が終わった。学校から、帰るまでの間に、何度か太一と目が合ったが、すぐに太一に目を逸らされてしまい、ヤマトは太一に話し掛ける。タイミングがつかめなかった。

 

それから、数日、ヤマトの学校生活は何の、変化も無いまま、過ぎて行った。

 

だが、ある日、ヤマトの下駄箱に、手紙が入っていた事により、破られる

手紙の内容は、

「今日の放課後、500学校の裏庭で待つ、もし、逃げたら、お前の秘密をみんなにばらす」

と言う物だった。

ヤマトは、放課後の約束の時間、500になり、みんなが帰り、運動部に所属している生徒も帰り、

学校に人気の無くなった時間に、手紙通り、学校の裏庭に行った。

 

ヤマトが、約束の時間きっかりに、裏庭に来たが、誰もいないように見えた。だが、突如ヤマトの、背後から、ヤマト目掛けて、走りよる影があった。ヤマトは、背後から、走ってくる者の足音を聞き、振り返ると、顔は、帽子と風邪の時にするマスクで覆われていた為、確認できないが、相手は、走ってくる勢いを殺さずに、その勢いをナイフに乗せて、ナイフをヤマトに突き刺すつもりらしい、襲撃者はヤマトまで、2mまで、迫っていた。相手は運動部か何かに所属しているらしく、人間の中学生にしては、走るのは早かった。だが、ヴァンパイヤである。ヤマトの能力は相手の運動能力全てを凌駕していた。

 

ヤマトは、コンマ一秒にも満たない間だけ高速移動し、相手の右サイドに侵入し、相手の走る勢いを、そのまま利用する為、足を出した。

相手から、言わせてみれば、ヤマトが突然消えたように見えただろう、そして、急に自分の右脇に現れ、足を払われてしまい、襲撃者は勢い良く、転んだ。

 

襲撃者は転び、すぐに起き上がり、また、襲いかかろうとするが、ナイフが手に無い事に気付いた。

「探し物はこれか?」

襲撃者は、ヤマトに言われて、ヤマトの方を見ると、ヤマトは、ナイフ刃の部分を右手で握っていた。

「さあ、俺を襲った目的はなんだ?答えてもらおうか?ここまで、するって事は、本気で俺を殺そうと思っての事だ、だんまりは、許さないぜ、場合によっては、警察に突き出すぜ」

ヤマトは、相手に距離を詰める。だが、相手も後ずさる。

 

「とって、食いやしねえから、安心しろよ」

「嘘だ!!この化け物」

マスクで覆われている相手の口から発せられる。声はくぐもった声の為、誰だが、特定できなかった。

「俺の秘密を知ってるって事は、嘘じゃないみたいだな」

相手に、化け物と言われ、ヤマトのターコイズブルーの瞳の温度は、一気に下がった。ヤマトは化け物と、言われたのは、これが初めてでは無いが、やはり、言われたくない言葉、ワースト一位の言葉を言われてしまい、静かな怒りを纏い相手に言う

 

「悪いが、正体を暴かせてもらう」

相手は、ヤマトの冷たい怒りを感じ、背筋を凍らせる。ヤマトは、ヴァンパイヤの聴覚を研ぎ澄まし、近くに人がいない事を確認すると

右手に持っていたナイフを、真っ直ぐ振り下ろし、足元の地面に突き刺すと、ヤマトは高速移動をし、相手の背後に回り、しゃがみこむと、十分手加減をして、相手の足首を後ろから掴み、ヴァンパイヤの力を瞬間的に封じ、人間としての力で足首を後ろに引いた。

相手は、前のめりに転び、うつむせに倒れる。ヤマトは瞬時に、相手の背に乗ると、マスクと帽子を外す。

そして、ヤマトは知ってしまった。襲撃者の正体を・・・・