ヴァンパイヤ・ブラッド・3
体育の授業中のトラブルで大輔が倒れ、放課後、大輔を送って行こうとしたタケルと、それを拒もうとした大輔、二人が追いかけっこを繰り広げてから数日が経った。
今日も大輔は、5時間目の授業が終わると、ランドセルに教科書を急いで詰め込むと、ちらりとタケルの方を見ると、タケルはクラスの女子に話しかけられ、笑顔で受け答えしているのが眼に入った。大輔はそれを確認すると、ランドセルを背負い、全力で走り出した。
「コラ、本宮!廊下は走るな!」と怒鳴る先生に、「すいません急いでるんでぇ〜」という言葉を残し、廊下を駆け抜け、階段を二段飛ばしで駆け下り、下駄箱まで辿りつくおそらくは、大輔と同じクラス生徒達の中で一番早くここまで辿りついたと思っていた大輔だが、
「酷いなぁ〜大輔君、僕を置いてくなんてぇ〜」
今、教室にいる筈の存在であるタケルが、下駄箱に寄り掛かり、大輔に笑顔で話しかけてきた。
「タ、タケル!・・どうして、お前がここにいるんだよ!?」
「どうしてって、大輔君が僕を置いて行っちゃうから、追いかけて来たんだよ、僕途中で大輔君の事抜かしたんだけど、気付かなかったの?」
「うっ、嘘だぁ〜、俺、お前に抜かされた覚え無いぞぉ!」
大輔は大声を上げるが、タケルの普段と変わらぬ笑顔に、大輔は両肩を落とし、深々と溜め息を着く
(可愛いねぇ〜、まあ、僕が大輔君に追いついたのは、本当だけど、追いつかれたとしても、普通の人間である大輔君が気付く筈ないんだけどね)
タケルは、女の子達の相手を適当なタイミングで切り上げ、教室から廊下に出て、誰にも見られていないのを確認すると、ヴァンパイヤとしての能力を解放し、高速移動で一気に階段を駆け下り、階段を駆け下りる大輔を追い越して、下駄箱で待ち伏せていた。
「ついてくるなよ」
「ついてくるなって言われたって、僕の家もあっちなんだからしょうがないじゃん」
大輔がぶっきら棒に言い放つのに対し、タケルは満面の笑顔で受け流す。
「けっ」
大輔は面白く無いと言わんばかりに顔を背け、道を歩き出す。ここ数日の追いかけっこで大輔は走って逃げても、タケルには追いつかれるのが分っているので、タケルの事は相手にしない事にした。ムキになって突っかかっても疲れるだけなのも学習済みだった。
そんな二人のやり取りが数日の間続いた。ある日、その日、大輔は、廊下を走る事も無く、廊下を歩き、階段も歩いて降り、家までの道を歩いている。当然、いつもの様に、タケルもその後ろをついて歩いていた。
そんな普段とは違う状況にタケルは内心戸惑いつつも、大輔の後ろを歩いていると、突然、前を歩いていた大輔が振り返ると
「もういい加減にしろよな!!」
大輔は下校途中の道でタケルを怒鳴りつけた。
「何怒ってるの?」
「お前、どうして?いつもいつも俺についてくるんだよ!」
「だから、それは家が同じ方向なだけだって」
「いい加減な事言うなぁ!」
タケルの普段と変わらぬ笑顔に対し、大輔はとうとう爆発した。
「そう言って、いつもいつも顔だけで笑って、何が可笑しいんだよ!俺と帰る方向が同じなんだったら、どうして?いちいち帰る時間まで一緒にしたりするんだよ!いい加減にしろよ!」
大輔の的を射た言葉に、タケルは言葉を失ってしまう
「・・・・・・ご、ごめん」
タケルは顔に悲しみを浮かべると、俯くと小さな声で謝り、黙り込んでしまった。
「とにかく、もうついてくるなよ」
大輔は、そう言うと、走り出してしまった。
ただ、普段と違うのは、その後ろを追いかけるタケルの存在が無い事だった。
それから、数日の間、大輔とタケルは、教室で顔を付き合わせるだけの状態が続いた。タケルは、いつもと変わらぬ笑顔で、男女差別無く、穏やかに接している。大輔もタケルが転校してくる前と、なんら変わる事の無い日々を送っている。休み時間には、校庭でクラスの仲間とサッカーをして過す日々を送っていた。だが、大輔は、ある日、タケルという存在がいない事を寂しく思う自分がいる事に気が付いた。その度に大輔は、頭を左右に激しく振り、タケルの事を頭の中から追い出すのだが、どうしても、追い出す事が出来ない事に気付き、気が付くと溜め息ばかりついて、タケルに気づかれないように、チラチラとタケルの事を見ている日々を送っていた。
タケルも、大輔の後を追いかけなくなってから、タケルの容姿と誰にでも穏やかに接する性格も手伝ってか、話し相手には事欠かないのだが、ちょっとした時間に、大輔の事だけを考えている自分がいる事の気が付いた。そして、大輔に気付かれない様に大輔の事を見ている日々が続いた。
今はまだ気付かない、二人の胸に芽生えた感情を・・・・
後書き・はい、アップするの遅れて大変申し訳ありません、とりあえず、二人はケンカしてしまいましたぁ〜、まあ、また二人は色んな意味で仲良くなりますけどねぇ〜、それでは、今日はこの辺で終わります。