剣舞協奏曲・2
「遼、遼、遼」
名前を何度も呼ばれ、体を揺すられている感覚に俺は目を覚ます。
「ウォ・・レス」
目を覚ました俺の目の前に、金髪碧眼の年下の男の顔が目に入る。
俺は、夢の事を思い出し、左肩に右手をやる。
「だいじょぶかい?」
「ああ・・・なんとか」
「そうか、でも、酷くうなされてみたいだけど・・ホントに、だいじょぶかい?」
「だいじょうぶ、いつもの事だ。ちょっと、夜風に当たってくる」
俺は、ウォレスの言葉を途中で区切ると、ホテルのベランダに出る。
「ふぅ〜、またあの夢か・・・・」
俺は、ベランダの手すりに寄りかかり、額から流れてくる汗を手で拭い、誰ともなしに言う、時間的には、日付が変わるちょっと前なので、街の明かりも所々消えてるが、それでも、ホテルのベランダから見える、古風な町並みは、綺麗だった。環境美権だったけ、あれのおかげで今でも、この街は、古い建物を、今に残しているので、ここから街を眺めていると、タイムスリップしたように思える。
確か、あの後、俺と賢は、駆けつけた団地の住人が読んだ、救急車に運ばれてって、警察の取調べは、入院初日だけで、変だなと思ってたら、ヴァンパイヤハンター協会から、来たって変な奴が俺の前に現れたんだっけ、最初は俺も胡散臭いなって思ってたけど、俺と賢が見たのは、間違いなく、人間じゃなかった。そう現実を見つめ直すと、全てに納得が行った。
そして、この事は絶対に他言しないように口止めされる条件として、ヴァンパイヤを殺すにはどうすればいいかって聞いたのが始まりだった。この時、俺のヴァンパイヤハンターとしての、人生が始まった、ヴァンパイヤハンターになってから俺は、治を殺した奴を、躍起になって探したが見つからなかった。そして、つい最近になり、ようやく、そいつの情報が入ってきたので、俺はロンドンまで来た。
「治・・・仇は取るぜ」
俺は、空を見上げ、夜空に輝く星星を見て、決意を固める様に言ってみたが
「ガラにもねえな、物思いに耽るなんて」
自分でやってみた行動に、思わず苦笑する。
「遼」
振り返ると、そこには
「ウォレス、どうした?」
「遼・・・君、汗ビッショリだよ、体を冷やすと、良くない、これ」
そう言って、ウォレスは、俺に暑いココアの入った。マグカップを差し出す。
「サンキュ」
俺はウォレスの差し出したココアを一口だけ口に含む、口の中が甘く暖かい物に満たされていく、その暖かさは体の中にも広がり、俺の体が冷えていた事を思い出させる。俺は少しの間、街に残る明かりを眺めていたが、すぐに部屋の中に戻り、ウォレスの入れてくれたココアを飲み干すと、
「さあ、寝ようぜ」
俺は、ベットに仰向けに身を投げ出し、眠りに就く、今度はうなされることも無く、眠る事が出来た。
「この通りだよ、このヴァンパイヤが目撃されたのは」
俺とウォレスは、昼を過ぎた時間帯、一番人の通りが多くなる時間に、写真のヴァンパイヤの目撃多発地点である通りに行って見た。ウォレスは、ヴァンパイヤの写真と一通りを行き交う人と見比べてるが、如何せん、人が多すぎた。
「しかし、幾らなんでも、こう人が多いと、この写真のヴァンパイヤを見つけるのは、難しいね」
「まあ、気長に待つしかねえよ」
俺は、そう言って、工事中のビルの前にある。明かりの点いてない街灯に寄り掛かり、俺は、自分の右肩に、長い木箱を立てかけるようにして置く、中には、俺の愛用している剣が中に収まっている。まあ、街頭で持ち歩いたら、騒ぎになるから、夜以外の移動の際は、いつも、こうやって持ち運びしている。不便な事、このうえない、まったく、もう少しましな能力を得たかったもんだぜ
「とりあえず、空からも、探してもらうよ」
ウォレスは、そう言うと、こいつの持っている精霊、グミモンとチョコモンを出す。幼年期の状態なら、よほどの霊感の持ち主じゃないと、肉眼では見えないから、こういう場合でも安心だし、出し入れは何時でも出来る。ホント便利な能力だよな、
ヴァンパイヤハンターの能力は、人により様々だ。ヴァンパイヤハンターになる為に、儀式としてある魔方陣に入る、その魔法陣に入って、ヴァンパイヤハンターとしての才能がある者は、異世界に飛ばされる。ここでの割合は二人に一人、異世界に飛ばされなかった者は、その場で失格になる。そして、その異世界には、ウォレスが連れている精霊などが、沢山暮らしている世界で、俺も行った事がある場所だ、その世界を何日か放浪して、自分の紋章を見つけたり、自分のパートナーと出会えたりしたら、その世界から現実世界への出口が開く、まあ、そっちの世界に行ったきり、帰ってこなかった奴もいる。
ちなみに、無事帰ってこれる奴は、二人に一人、確立で言えば、無事ヴァンパイヤハンターになれるのは、四分の一、まあ、無事帰ってこられて良かったとしよう、今思えば、かなり、危ない橋を渡ったが、とりあえず、俺は帰ってこれた、奇跡の紋章を見つけて、俺は、奇跡の紋章の力を得て、初めてヴァンパイヤハンターとして認められ、今に至るって訳だ。
ちなみに紋章やパートナーを得て、ヴァンパイヤハンターになった奴は、身体能力の強化と、
一人一人違った能力が与えられる。この、能力は、種類に分けて、全部で三つ、
一つは、ウォレスの様な、精霊をパートナーとして得て、一緒にヴァンパイヤと戦う、召喚系の能力
もう一つは、この世界の元素、地水火風の、四つの元素を操る力を得る。元素系の能力
最後の一つは、物質に強化能力付加する。能力付加系、ちなみに、俺の能力はこれだ。
「でえ、見つかったか?」
「どうだった?」
ウォレスは、パートナーのグミモンとチョコモンに尋ねるが、二人とも首を振っている。
「今日は収穫なしだったね、仕方ないよ、かえろっ・・」
「ウォレス、危ねえ」
俺は、ウォレスの言葉を途中で遮り、ウォレスの胸に手を当て、突き飛ばす。俺の寄り掛かっていた街頭のすぐ傍にある。工事中のビルの上から、何本もの鉄骨が降ってくる。ウォレスは、俺が突き飛ばしたので、だいじょうぶだと思うが、ウォレスを突き飛ばした事により、俺には、鉄骨を避ける暇が無い
「遼!」
ウォレスの声が聞こえる。俺は、素早く木箱から、剣を取り出し、力を発動させる。
俺が手にした、剣の表面が、瞬く間に光に包まれる。これが俺の能力、物質に対しての強化能力の付加だ。
俺の持っている剣は儀礼済みの銀で出来ている。銀に含まれている。ある成分が、ヴァンパイヤにとっては猛毒となり、儀礼済みの銀は、より一層強力になる。だから、ヴァンパイヤハンターは、儀礼済みの銀で出来た武器を持つ、そして、俺のこの剣を包んでいる光は、福印の刃と呼ばれ、ヴァンパイヤ最大の弱点、聖水と銀、この二つの中に含まれる。苦手な成分を高純度で固めた様な物で、ヴァンパイヤが、この刃で切られた場合、確実に死ぬ、それ以外に、この力を発動させたこの剣で切れないものは、今の所無い
俺は、俺に向って降ってくる全ての鉄骨を片っ端から、切り落とした。
全ての鉄骨が、落ち終わると、落ちてきた鉄骨全てが俺の周りの、歩道の石畳の床のタイルを砕き、突き刺さっている。
「WOW」
ウォレスが、俺に近付きながら、俺の周りの地面に突き刺さっている鉄骨の、斜めに切られた切断面を見て、素直に感嘆の声を上げている。
「ふう〜危なかったぜ」
俺は、軽く息をつくと、剣を肩に担ぎ、工事中のビルの上を見上げた。
「事故かな?」
「いやっ、間違いなく俺達を狙ってだな」
俺も、ウォレスと同じく、事故かと思っていたが、ビルの上に立つ人影を見て、すぐに考えを改めた。
「そうのようだね」
ウォレスも人影を確認できたのか、目つきが鋭い物に変わる。俺達に見られてか、どうかは知らないが、相手はすぐにビルの陰に引っ込み、俺達の視界から消えた。
「グミモン!」
ウォレスは、自分の傍らを、フワフワと浮いていたグミモンの名を呼ぶと、グミモンは、パートナーの心中を、察したらしく、すぐに、ビルの上に舞い上がり、追跡を開始する。
「どうする?」
「もちろん、追うに決まってんだろ」
確認するウォレスを置いて、俺は木箱から、鞘を取り出すと、剣を収め、鞘についているベルトを肩に通し、剣を背に、夜のロンドンを走り始めた。すぐに、ウォレスも俺の隣に並び、二人で、夜のロンドンで襲撃者を追い詰める為の、追跡を始めた。
後書き・はい、とりあえず、剣舞協奏曲第二話です。いかだでしょうか、とりあえず、これは次で終わる予定です。これはマジです。とりあえず、これを終わらせてから、ヴァンパイヤブラッドの方の連載と、長編の連載を再会したいと思います。後は、半同人部屋の連載も開始します。ちなみにこの題名の剣舞協奏曲、どこか?剣舞とお思いの方、次回で、題名らしくなります。