カイザー様幸せか計画
大輔と賢は、明日は休日なので、デジタルワールドのパトロールに来ていた。ベノムヴァンデモンを倒し、デーモンを追い返したが、デーモン達を倒した訳では無いので、油断は出来ないという事で、旧選ばれし子供達と、大輔達新たなる選ばれし子供達で、交代でデジタルワールドのパトロールをしているのだ。
光子郎の提案で、完全体に進化できない、パートナーデジモンをパートナーに持つ、新たなる選ばれし子供達は、戦力の分散を避ける為に、ジョグレス進化のパートナー同士で、交代でパトロールをする事になっている。
「はぁ〜、しかし、平和なもんだよな〜」
大輔は、青空を見上げながら、隣を歩く恋人、賢に視線をやりながら言う
「そうだね、大輔、でも・・・油断は出来ないよ」
賢も大輔に視線を合わせて、優しく微笑みながら言うが、語尾の、油断は出来ない、と言う時には、賢の顔は真剣だった。
「ああ、わかってんよ、なあ、ブイモン」
「もちろん」
大輔の脇を歩く、ブイモンも、任せろと言わんばかりに、胸を張る。
大輔は、知っている。賢は罪を犯した事で、後悔の念と罪の意識に、潰されそうになり、苦しみ、
もう、十分償ったと、大輔は思うのだが、賢はまだ、償えていないと、頑なに自分を許せずにいるのを、そんな賢を、恋人を、何とか、救ってあげたいと思うけど、有効な手立ては思いつかづ、大輔は、苦悩しているのだ。
大輔は、そんな考えに没頭し、上の空に、森の中の道を歩いていると、
「うあああ」
悲鳴を上げ、派手な音を立てて転んだ。どうやら、脇に生えていた。木の根っこが、地面に突き出てきているのに、気付かず、足を取られたらしい
「大輔!だいじょうぶ!?」
慌てて、賢は大輔に駆け寄る。
「ああ・・・こんぐらい、なんともねえよ」
「良かった」
賢はホッと胸を撫で下ろした。その瞬間
「うああああああああ」
賢が両手を、こめかみの辺りに当てて、その場に崩れ落ちた。
「おっ、おい!賢!!どうしたんだよ!?」「賢ちゃん!賢ちゃん!!」
立ち上がった大輔が、賢の両肩に手を当てて、揺する。
ワームモンが大輔の脇で、賢に必死に呼びかける。
「だい・・・すけ・ワーム・・モン・・こないで」
賢は、急に立ち上がり、大輔から、逃げるかのように、頭を両手で押え、ワームモンと大輔を置いて、森の中に駆け出す。
「おっ、おい!!賢!!どこ行くんだよ!?」
大輔も賢を追いかける為に、森の中に入る。
大輔は、ワームモンとブイモンと分かれて、森の中を探す事にした。
「あっ!!」
大輔は忘れていたのだ。デジヴァイスを使えば、賢の居所が確認できる事を、思い出した大輔は、すぐにデジヴァイスで、賢の位置を確認すると、賢は動いていないのだ。嫌な予感に駆られながらも、大輔は賢のいる方に、駆け出す。
「おーい、けーん」
少し、走ると、立っている。灰色の制服を着た。賢の後姿を視認した大輔は安堵し、賢に駆け寄りながら、声を掛ける。
「・・・・・・・」
賢からの返事は無く、大輔は不思議の思いながらも、賢に声を掛ける。
「賢?」
大輔は、賢の肩に手を掛けようとすると、
「僕を、その名で呼ぶな!!」
賢とは違う、低めの声で言うと、賢は大輔の手を払う、そして、賢はゆっくりと、振り返る。
「!!!!!!!!!」
賢が振り返ったら、そこには、もう、大輔に知っている。賢はいなかった。
「ふははははは、ようやく、出れたぞ!」
そこにいたのは、バイザーをかけ、マントを羽織った
「デジモンカイザー!!どうして?なっなんで!?お前が!?ここにいる!!?賢を、賢を、どこへやった!!?」
今の賢とは似ても似つかない、かつての賢がいた。
「なんで、僕がここにいるか?だと、それは、僕が消えたわけではないからさ、僕は今まで、あいつに、賢によって、ずっと、押さえ込まれていた。だが、ようやく、出れたぞ、ふははははは」
いつも通りに、相手を見下した様な、高笑いをするカイザー
「お前、賢をどこへやった。デジタルワールドをどうするつもりだ!?」
大輔はカイザーに、掴みかからんばかりの勢いで、カイザーに向って叫ぶ
「賢は、今、僕の中にいる。デジタルワールドについては、もう、支配する気も無い、デジモンは生き物なんだろう?気付かなかったとは言え、僕のしてしまった事は、許されない事だ」
カイザーの顔には、深い後悔と言う名の感情が浮かぶ
「へっ?」
大輔は、カイザーが何を言ったのか、理解できずにいた。
「僕が出てきた目的は一つだ・・・」
カイザーは、そう言うと、斜めに俯き、黙ってしまった。大輔はカイザーの次も言葉を待った。
カイザーの目的を聞く為に、大輔は生唾を飲みこんだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
長い沈黙が訪れる。
痺れを切らした大輔は、沈黙を破った。
「おい!お前の目的はなんだ!?答えろ!ジモンカイザー!!」
「・ぼくの目的は・・・おまえだ・・・・」
カイザーは少し顔を上げ、小さな声で言うが、大輔には聞こえていなかった。
「はあ?聞こえねえよ、もう一回言ってくれ」
「ぼくの目的は、お前だと言ったんだ!!ちゃんと聞いていろ!!」
カイザーは大輔に向って、怒鳴りつけるように言い放つ
「・・・へっ?」
大輔は現状が理解できず、混乱した。
「僕が出てきた。理由は、ただ一つ、本宮大輔、目的はお前だ」
カイザーは、大輔を指差すと、いつものように、不適に言い放つ
「はあ?」
なおも、大輔は状況が理解できず、混乱した。
「ええい、お前のような、馬鹿には、何を言っても無駄だ。」
カイザーはそう言うと、大輔の顎に手を当て、自分の顔を近づける。
「僕は、お前が好きだ。賢なんかには、渡さない」
カイザーは、不適に微笑むと、大輔の唇を奪おうとする。
「なっ!なにしやがんだ!!」
大輔は、カイザーの胸に手を当て、押し返す。
「ほう、僕にそんな態度を取っていいのか?一つ、言い忘れたが、僕は賢と、記憶を共有している。今のお前の態度を見たら、賢はなんて言うかな?賢は僕で有り、僕は賢なんだ。お前が何度も、ベットの上で賢の事を、好きだとか、愛しているとか、言っていたのは、すべて、嘘、偽りだったと言う訳か、そうだったのか?うん?」
「うっ」
大輔は、押し黙るが、
「いいぜ」「何!」
すぐに、カイザーに向って言い放つ
「良いって言ったんだよ、俺は賢の事が好きだ。お前も賢なんだろ、だったら、俺は受け入れる。賢だろうが、デジモンカイザーだろうがな!」
「ほう、その言葉が、本当だと、証明できる物があるかな?」
「おっ、俺に、どうしろってんだよ?」
動揺する。大輔を見て、カイザーは、ニヤリと不適に微笑む、