星の光と星の闇・9

相も変わらずのせーラー服姿の輝二は光の剣を出現させると

目の前にある切り出してきただけの単なる丸太を四等分にし、薪木へと変える。

「ポコモン・・これはここに置いておくけど・・・良いか?」

「あ、輝二はん、いつもありがとうじゃぞい」

ポコモンに確認すると、紐で縛って一纏めにした薪を他の薪がある場所へと積み上げる。

数日後に、輝二の胸の傷は包帯を外そうとしたら、切り裂かれた服と体は元に戻っていた。

この事には、輝二自身戸惑っていたが、何事も無かったので、とりあえず、置いておくことにした。

 

ポコモンとネーモンの無邪気さに浸り、自然と打ち解ける様になった輝二、最初の内は、二人にどう接して良いのか分らなかった輝二だが、ポコモンとネーモンの裏表の無い性格と暢気さに毒され、すっかり二人の家の新しい住人として、生活を共にする様になって一週間が過ぎたある日

 

ポコモン達の住んでいる家が建つ小高い丘の麓には小さな町があり、火の手がその町から上がっているのが目に入った。

「あれは?おいポコモン!」

その日も薪を割っていた輝二が、町全体から火の手が上がっているのを見て、ただ事では無いと思い、いつの間にか家の中に入り、食事の準備を始めたであろう、ポコモンとネーモンを呼びかける。

「どうしたんじゃ?」

「ど〜したの〜」

輝二の声の様子に、何かを感じたらしく、僅かに慌てて出てくるポコモンに対し

ノンビリとした様子で出てくるネーモン

 

黙っている輝二が手麓の町を指差すのを見て、指の指し示す先にある町を見て

「なっ、なんじゃあれはぁ〜〜!!?」

「町が燃えてるねぇ〜」

町全体が火に覆われているのを見て、絶叫するポコモンに対し

やはり、暢気でどこまでも間の抜けた声をあげるネーモン

 

「だぁ〜、何を暢気な事を言ってるんじゃハラァ〜!とにかく、言って見るぞい!輝二はんは、家で待ってて欲しいハラ」

「分った。」

「ええ〜〜!!それなら、僕が待ってるよぉ〜」

「良いから、来るんじゃぁ〜!!」

ネーモンを怒鳴りつけると、慌てて丘を駆け下りていくポコモンに対し、危険を感じているのか、やはり、間の抜けた声をあげるネーモン

「しょうがないなぁ〜」

諦めたかのように漏らすと、ネーモンはポコモンの後に続いて走り出すが、

やはり、ノンビリとした様子が抜けない

 

ポコモン達が町へ着くと、そこは一面が火の海だった。逃げ惑う町の住人であるデジモン達

「何があったんだハラ?」

近くにいたガブモンを捕まえて聞いてみると

「突然、ケルベロモンが村を襲って来たんだ。逃げないとぉ」

「なんじゃってぇ〜?」

絶叫するポコモンを置いて走り去るガブモン、ネーモンは緊急時にも関らず、ボ〜っとしている。

 

すると、近くにあった壊れかけた建物の壁を破り

「ああ〜、ケルベロモンだぁ〜」

ネーモンのやはり、間の抜けた絶叫が響く

「に、逃げるハラァ〜」

自分達の目の前に突如現れた、ケルベロモンに、ポコモンは踵を返し逃げ出そうとする。輝二とネーモンもそれに習い逃げ出そうとするが、ケルベロモンは自身の身軽さを生かし、ポコモン達の目の前に回り込まみ、逃げ道を塞ぐ

 

「ネェネェ、どうするの?ポコモン」

蛇に睨まれた蛙のごとく、ケルベロモンはポコモンが一瞬でも目を反らしたら、飛び掛ってきそうなので、ポコモンはネーモンの問いに答える事は出来なかった。

「ヘルファイヤー」

ケルベロモンの口が大きく開き、口から何物だろうと焼き尽くすであろう火炎が吐き出された。

 

吐き出された火炎がポコモン達に迫った瞬間、咄嗟にポコモンとネーモンは目を堅く閉じるが、いつまでも火炎が襲って来ないので、恐そる恐そる目を開けると、目の前に

「輝二はん!」

「心配になってな・・・・・すまん」

輝二は顔だけを僅かに自身の背後にいるポコモン達に向け答える。

輝二は自分の体の前で右手に持ったサーベルを回転させ、火炎に対して盾にしていた。

輝二が回転させた剣は、火炎を切り裂き、剣風が熱さえも防いでいた。

 

火炎が途切れて、無事な輝二達を見て、ケルベロモンは新たに現れた輝二を見て

目を見開くが、すぐに戦闘体勢を取り、いつでも飛びかかれるように姿勢を低くする。

「なんでこんな事をする!」

「コノセカイハケルビモンサマノモノ・・・ジャマトナルモノハスベテハイジョスルノミ」

輝二の問い掛けるに答えるケルベロモン、両者は暫し睨み合う、剣をケルベロモンに向かい油断なく構える輝二

 

耐え難い沈黙の支配する空気の中、先に動いたのは、ケルベロモンだった。

大きく飛び上がると、自身の爪と牙で宙から輝二に飛び掛る。輝二は倒れる位身を沈めると、ケルベロモンの腹の下を掻い潜り、ケルベロモンの背後に回り込む、ケルベロモンの爪が、り返ると、同時にケルベロモンの顔を輝二の剣が横薙ぎに一閃、ケルベロモンは自身の顔を真横に切り裂かれた事により、断末魔の雄叫びを上げる事無く、黒い粒子となり四散した。

「まさか、デジタルワールドにも、堕天したデジモンがいるなんて・・・人間の世界は今どうなってるんだろ?」

黒い粒子を剣に吸収し浄化し終わると、輝二は一人そう呟く輝二のいた地面に突き刺さる。