星の光と星の闇・16

「輝一!輝一っーーーー!」

輝一の名を叫びながら輝二は床に横たわる輝一の両肩に手を当てて体を揺すっていると、僅かに輝一の唇が動いているのに気付いた。輝二はすぐに輝一の口元に耳を持っていき耳を済ませると、僅かに輝一の口から呼吸音が聞こえた。

「まだ生きてるっ!」

喜びの混じった声を上げると、すぐに輝一の胸の傷に目をやった。胸に刺さっていた剣が今は消滅して、ただ胸の真ん中に穴が空いていて、その穴からは今も血が出ているのが見て取れた。

 

(何とか血を止めないと・・止血できそうなものは何か無いか?)

 

両親に言われてハンカチを持ってはいたが、今の格好ではあるはずもない。だが、すぐに腰の紺色のリボンの存在に気がついた。すぐに輝二はリボンを解くと、輝一の胸の傷の上に押し当てたが、すぐに血が滲み出てくる。今度は輝一の身につけていた黒一色の布で出来ている胸に穴の空いている長袖の服を破き、胸に当てたリボンを押さえるように輝一の体に包帯の変わりに巻きつけると、輝一の右脇に頭を差し入れると立ち上がった。

 

(どこか医者のいる場所に連れて行かないと・・・)

 

輝二の頭の中はその思いで一杯だったが、意識を失った人間一人に肩を貸して歩くには、やはり限界があり、変身しているから重さは余り苦にはならなかったが、やはり自分とほとんど同じ大きさの人間を担いでいるので、酷く動きにくく感じたが

 

「出口か・・・」

 

薄暗い石畳の通路の先に僅かな光が見える。元々薄暗い大地だった為か、出口に近付くまで気付かなかった。輝一を担いだ状態で出て、神殿の外に出て数歩歩いていると、傍らから声を掛けられた。

 

「輝二は〜〜ん」

「ポコモン!・それにネーモンも・・・お前達、どうしてここに?」

「輝二はんの声が聞こえたから声のした方に来てみたんだマキ」

「そうだったのか」

「それより、輝二、その子だ〜れ?」

ネーモンが輝二が肩を貸している存在を指差す。

「そうだ!ポコモン、この辺に医者はいないか?」

「んっ!・・どうやらその少年怪我をしてるマキ・・・見せてみるハラ」

ポコモンに促されて、輝二は輝一を地面に下ろすと、何やらポコモンは腹巻の中をゴソゴソとやっていると、包帯と乾燥した葉っぱを何枚か取り出した。

 

「傷口の上にこの葉っぱを貼り付けて、包帯を巻くマキ」

すぐに輝一の体に包帯の代わりに巻きつけていた服を解くと、ポコモンに言われた通りに傷口の上に葉っぱを貼り付け、包帯を巻く

「とりあえず、これで大丈夫だマキ、ただ酷く弱っているように見えるハラ」

ポコモンが輝一の額の上に置いていた手を離しながら言うのを聞いて

「どうすれば良い?どうすれば輝一を助ける事ができる?」

「う〜〜ん、とにかく今はどこかで安静に出きる場所で安静にするしかないハラ」

「分かった」

 

それからバラの明星に進んできた道を一旦引き返す事になるが、デジモン達の住む村で部屋を借りて、そこのベッドに輝一を寝かせる事にした。その村で三日目の朝を迎えたが輝一は目を覚まさず、輝二は輝一を寝かせている部屋を借りている手前、部屋を貸してくれた村長であるネフェルティモンの住む屋敷の掃除や膨大な量の本の整理などを手伝った。三日間ポコモンや医療の心得のあるネフェルティモンの話では、輝一の傷は完治はしていないが、順調に回復に向かっているらしく、後は目覚めるのを待つのみとの事だった。後で分かった事だが、ポコモンの持っていた薬草が実はデジタルワールド内でも滅多に手に入らない凄いものだったらしく、輝一が死なずに済んだのは、この薬草のお陰と言っても過言ではなかったらしい。

 

四日目の朝と昼の間の時間

「んっ・・・・ここは・・・」

輝一は目覚めた。体を起こしてみると

「うっ・・・」

起こした際の衝撃で胸にズキンと痛みが走った。胸元に視線を落としてみると、上半身には服を着ていない状態で、両胸を隠すように包帯が巻かれていた。

「俺は・・生きてる・・・のか・・・」

誰に確認するともなしに呟いていると

「あっ・・・目が覚めたんだ」

声のした方に視線を移すと、そこには見覚えのあるデジモンがいた。確か輝二と一緒に居たネーモンと呼ばれていたデジモンだった。

「待っててね、今、輝二に伝えてくるから」

本人の生来のものなのか、どうも暢気な気質らしく、どんな事でもネーモンから伝えられると、間延びしたものになり、どんな重大事も大した事の無いように聞こえてしまうが、すぐにこちらの方に走ってくる足音がする。

「輝・・二」

「輝一・・気がついたのか・・」

部屋の入り口から顔を覗かせた輝二と目が合ってしまった。

 

ワシらは出てくハラっと言って、ポコモンはネーモンを連れて部屋を出て行ってしまった。部屋が気不味い沈黙に支配される。輝二の視線は床と輝一の間を行ったり着たりを繰り返し、輝一は輝一で最初に目が合ったきり、ベッドの上に置かれている自分の両手の握り拳を見るように視線を落としたままだった。

「責めない・・の?」

「えっ・・・」

「俺は・・・輝二の事を殺そうとした・・それなのに・・・こうして・・生きながらえるなんて・・・いっそあのまま」

「・・・・・・・んだよっ」

「えっ・・輝二?・・」

輝一は顔を上げて輝二のほうを向く、すると輝二が泣きそうな顔をしているのに気付いた。

「どうして、そんな事言うんだよ!輝一が・・俺と話がしたかったって言ったのは・・・嘘だったのか!?」

「違う・・それは嘘じゃない・・」

弱弱しく答える輝一に輝二は悔しそうに歯を食いしばると、輝一に背を向けて、どこかへと走り去ってしまった。

 

後書き・はい、今回はここで区切ります。いつも中途半端ですいません、どうもブランクなのか、前まではちゃんと容量を考えて話を進めていけたのが、最近、この脳内の文章容量計算機が不調らしく、上手く機能してくれません・・・では、今回はここで終わります。