星の光と星の闇・14
ポコモンとネーモンに「すまんが先に行く、後からゆっくりついてきてくれて構わない」とだけ言い残し、ダスクモンが飛び去った方へ走る輝二。前方に僅かに確認できる鳥の影を追い、光の闘士としての能力を開放して疾走する輝二。前方に見える鳥がようやく地に降り立ったのを走りながら視認すると、更に走る速度を速める。鳥が降り立ったと思われる場所につくと
「ダスクモーーーン!!!」
大声で叫ぶが、答えるものはいなかった。だが、岩肌が続く大地の中に朽ち果てた宮殿のような場所を見つける事が出来た。そしてその宮殿のそばから黒い鳥が飛び立つ所だった。その鳥の背にダスクモンがいないのを確認すると、輝二は朽ち果てた宮殿へと足を進めた。
中は打ち捨てられてから随分と時間が経っているらしく、無数の柱が等間隔に立っているが、中には倒れているものや途中で折れているものなど様々だった。その柱が並ぶ以外に中は薄暗くただ広いだけの空間に見えたが、奥に進んでいくと、一面に同じような形の仮面が無数にかけられている壁へとぶつかった。
「ここは?」
不信に思いながら辺りを見回していると、背後から輝二目掛けて飛びかかる影があった。
輝二は背後から振り下ろされる剣に対して、振り返りながら剣を真横にして自分の頭めがけて振り下ろされた剣を受け止める
「くっ・・ダスクモン・お前は何者だ?」
新しい仮面を身につけているダスクモンに鍔迫り合いをしながら問いかける。輝二の問いかけに相手が仮面の下で苦しげに呻くのが分かる。
「ケルビモンはデジタルワールドを破滅させようとしているのに、どうしてそれに加担する?お前も人間なんだろ?」
更に問い掛けるが
「黙れ輝二!」
初めて見せた相手の激昂だった。そしてその激昂に合わせるように相手の剣は激しさを増した。
剣と剣が連続で打ち合わされる金属音が薄暗い神殿の中に鳴り響くが、輝二はダスクモンの猛攻に防戦一方だった。しかし、ダスクモンの繰り出す剣は確かに早く重い攻撃だったが、今までの剣とは違い、技よりも荒々しさが目立ち、攻撃が雑なものになっていた。そのお陰で輝二も何とか攻撃をしのぐ事ができた。
「どうしてっ!俺の名前を知っている?」
何とか苦戦しながら攻撃を凌ぎながら問い掛ける。
「うおおおおおおおおおおおっ!」
輝二の問いかけを無視するが如く、更に攻撃が激しさと重さを増し、ついに輝二は
ガキンッ!
「しまった!」
剣を弾き飛ばされてしまった。
「もらった!」
歓喜の声を上げながら、ダスクモンは剣を持っていない方の左手で素早く輝二の首に手をかけ、片手一本で輝二を近くの柱へと投げつけた。
「くっ」
宙を舞いながらも輝二は体制を立て直し、柱へと激突するのではなく、地面に降り立つかのように柱へと両足で着地し、弾みをつけて相手の方へ飛ぼうと考え、自分を投げつけた相手の姿を確認すると
「シネ」
ダスクモンは輝二を投げつけた左手の平から濃紫の闇エナジーを放出した所だった。相手の方へ真っ直ぐ飛び出していたら、闇のエナジーの直撃を受けていた所だったが、咄嗟に輝二は斜め前に飛び出す事で直撃を免れたが、輝二が先ほどまでいた柱に闇のエナジーが叩きつけられた事で、柱が激しい音を立てて崩壊し、その無数の残骸が輝二へと降り注ぎ、降り注いでくる残骸の下敷きになってしまった。
「くうっ」
運が良いのか悪いのか輝二は首から下が瓦礫に埋まり呻きもがく。その輝二の埋められている瓦礫の上にダスクモンは降り立つと、輝二の顔前に剣を突きつけた。歯を食いしばりながら、輝二は瓦礫からの脱出を試みてもがくが
「終わりだ。」
剣が自分の首へと迫ってくるのを見て、咄嗟に両目を瞑る。
「コ・・ウ・・・ジ」
輝二の名を呼ぶダスクモンの剣が僅かに引かれたのを見て、輝二は咄嗟に光の剣を瓦礫の下の僅かに動く右手の中に呼び出し、動くだけ右手を横薙ぎに動かすと、幸運にも輝二の上に乗っかっていた柱の残骸の殆どが上から吹き飛んだ。ダスクモンは本能的に後ろに飛び退いていた。輝二もこの隙を逃さず、立ち上がると、再びダスクモンと対峙した。
(まただ・・・またこいつは俺の名前を呼んだ。そして俺と同じ顔・・・何者なんだ?)
(輝二・・・俺の・・・弟・・・・輝二・・・)
ダスクモンの中で、闇の闘士として、輝二の双子の兄として、自身の存在が大きく揺れ動くが
「憎め輝二を!お前の母の哀れな姿を!忘れたのか!?同じ兄弟でありながらお前は惨めだと思わないか?輝二を憎め!闇こそがお前の心を癒してくれる!お前は闇でしか生きられないのだ!倒せ輝二を!」
ダスクモンの中でケルビモンの声が激しく木霊する。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
剣を握り黙って立っていたダスクモンが、突如として相手が苦悶のような声を上げる。ただ、その声は苦しげだがダスクモンが纏う闇のエナジーは強大さを増すのが分かる。何かがダスクモンの中で暴走しているかの如く、強大になりながらも同時に不安定にもなっているのが実感できるが、巨大なエナジーが生み出す衝撃に、輝二は咄嗟に剣を持っていない方の左手の甲を額に押し当てて片目を瞑る。
「ぬおおおおおっ!」
突如ダスクモンは気声を上げると、輝二に斬りかかってきた。その剣の振りは今までのダスクモンの剣と違い、単純な横薙ぎの一振りだったが、今までのどの攻撃よりも早さがあり、重さがあった。輝二は攻撃が来るのが分かると、剣を握る右手の手首を左手で掴みしっかりと受け止める体勢を作ったが、相手の余りの攻撃の重さに再び柱へと叩きつけられる。余りの衝撃に輝二の体を激痛が走り抜けたが、何とか倒れずにダスクモンの方を向くと、相手はもう眼前にいた。剣を持っている右手の手首をダスクモンの左足で蹴り上げられ、輝二は再び剣を取り落としてしまう。
(憎め!輝二を倒せ!)
ケルビモンの激しい声がダスクモンの中で木霊する。
「死ね輝二!」
ダスクモンがいつの間にか逆手に持ち替えた剣を振りかぶっているのが目に入った。背後には柱、左右に避けようにも間に合うとは思えない、それに相手との実力差を考えると、それは無理だと分かる。
(クソッ!今度こそダメか)
咄嗟に輝二は両目を固く瞑る。
ブクシュッ!
剣が何かに深々と突き刺さる音が聞こえるが、痛みを感じないのに対して、自分はもう死んだのかとさえ思ったが、どうやら体の感覚からして、そうでは無いらしいと実感して、両目を開けると、目の前には自分の剣で自らの胸を刺し貫いたダスクモンがいた。
「ぐふっ」
ダスクモンは苦しげにむせ込むと、仮面の顎の辺りから血が滴り落ちるのが見えた。仮面の下で相手は血を吐いたのだろうっと輝二はどこか冷静に思っていると、ダスクモンは後ずさり始め、輝二から距離を取り始めたが、傷は誰が見ても重傷だと分かるもので、ふらふらとした足取りで僅か数歩歩いただけで、輝二が背にしている柱から一番近く柱の影に倒れこむ。
輝二には余りの事態に状況を把握するのに時間が掛かってしまったが、事態を把握した輝二はすぐに柱の影から足だけが見えているダスクモンの所へと駆け寄った。
そこには仮面が外れ、自分とそっくりな顔をする人間がいた。
あとがき・はいどうも長々と休載?みたいなものを挟み連載が再開させて頂いた星の光と星の闇です。旧サイトの方では連載を終わらす事が出来ないままPCクラッシュによりサイトを閉鎖する形になってしまいましたが、新しいサイトを始めるに辺り、こちらの連載を再会したいと思います。