星の光と星の闇・11
ギリギリと締め上げられる首に、輝二の顔は真っ赤を通り越し、蒼白になり、四肢をグッタリとさせていた。
手に持っていた光の剣は壁に叩きつけられた衝撃に落としてしまい、足は地面から50cm程離れ、壁に押し付けられ、首を人外の力で締め付けられ遠のく意識の中、ポコモン達の声が聞こえるが、その声すら遠い感じがして良く聞こえなかった。
だが、失いかけた輝二の意識に直接語りかける声がした。
その声はポコモン達の声みたく耳に聞こえてくる物とは違い、輝二の心に語りかけてくるように何故かハッキリと聞こえた。
「・・・じ・ん・・・み・も・こう・くん・・・源輝二君・・・目を開けるのです。」
何度も聞いた事のある声、威厳に満ちているが、決して重圧的な物では無く、深い慈愛の心を感じる声
「オファニ・・・モン?」
薄れ行く意識の中で輝二は声には出させず、思いだけで返事をすると相手のも通じたらしく、オファニモンは続ける。
「源輝二君・・・あなたは光の剣に選ばれた者・・・あなたがもし力を欲するならば、光の剣は、あなたに答えてくれる筈です。さあ・・・その手に剣を取るのです」
「ぐっ・・・」
輝二は、朦朧とする意識の中、いつもより重たく感じる目蓋を持ち上げ、目の前の敵を見て、左手で首を絞めているデビモンの右手首を掴むが、単純な力で敵う筈も無く、デビモンの首を絞める力は一向に緩む気配が無い
「ほう、まだ意識を失わないとは、さすがは光の闘士と言いたいが、もうその手に光の剣は無い」
勝ちを確認した余裕の笑みを浮かべるデビモンは油断しており、輝二の右手が光の剣に伸びている事に気付いたが、その手が光の剣を掴むには後1mは長くないと届かない距離に光の剣は落ちているので、構わず輝二の首を締め上げる。
「ぐぅ・・・・」
呼吸の全く出来ない息苦しさに、輝二は顔をしかめるが、それでも震える右手を、遥かに手の届かない所に落ちている光の剣へと伸ばした。
輝二の伸ばされた手に答えるかのように、石畳の路面に落ちている光の剣が風も無いのに、小刻みに揺れカタカタと音を立てるが、デビモンはその音に気付かず、輝二の首を絞める手に尚も力を込める。
「ぐっ・・・・」
更に閉める力が強くなり、苦しさに輝二の顔が歪み、意識を手放しそうになるが、それでも懸命に意識を保ち、届かなぬ光の剣に右手を伸ばす。
「さあ、後どれ位持つかな?・・・ふふふ」
デビモンが歪んだ笑みを浮かべ、尚も力を込めた。
「ぐぅ・・・・」
輝二が意識を手放した。力を失った四肢をぶらっとさせ、輝二の意識は深い闇へと落ちた時
(光の剣・・・俺に力を貸してくれ・・・・)
輝二は心の中で訴えた。
その訴えに答えるかのように、光の剣は輝二の右手に吸い込まれるように、地面に落ちていた光の剣は輝二の右手へと納まった。
右手に確かに握られた感触に、輝二の意識は覚醒した。
「何!・・・いつの間に剣を!!」
残虐な表情ばかりを浮かべていたデビモンの顔に初めて、それ以外の驚愕の表情が浮かぶ
「だが、その剣では、私を傷つける事は出来んぞ・・う〜ん、無駄な足掻きだったな・・・死ねぇ〜光の闘士!」
だが、光の剣では自分を傷つけられない事を思い出し平静を取り戻したデビモンが、輝二の首を絞めている右手に力を込めようとしたが、それより早く輝二は剣を左上から右下へと斜めに一閃、剣はデビモンの体へと届く筈が無いのだが、白い閃光の刃を持つ光の刃は輝きを増し、刃の長さが普段の倍以上へと伸び、デビモンの右肩から左の脇腹まで切り裂いた。
「ぐあああああ」
自身の体を切り裂かれた痛みに絶叫して、輝二の首を絞めていた右手を引き、両手で切り裂かれた箇所を抑えのた打ち回る。
「ごほっごほっ・・・はあはあはあはあ」
解放された輝二は、地に両膝を付き、喉に剣を握っていない方の左手を添えて、激しくむせ込む
「お、おのれぇ〜!!光の闘士・・・殺してくれるぅ!!」
今までの残虐さに裏づけされた冷静さを完全に失い、輝二に切られた箇所を左手で押さえ、歪んだ怒りに染まった瞳で輝二を見るデビモン、そのデビモンをようやく呼吸を整えた輝二が、顔を挙げると、その瞳からは確かな力強さを宿した眼光を感じた。輝二は苦しむ体を精神力で押さえ込むと、ふらつきながらも立ち上がり、デビモンと再び対峙した。
「死ねぇ〜〜〜!!」
叫びながらデビモンは一気に輝二との距離を詰め、輝二を揃えられた右手で刺し貫こうとするが、その四指が貫いたのは輝二では無く空、気付いたら自分の攻撃を避わした光の闘士が懐に入り、手に持った剣を斜めに一閃、それと同時に胸部に痛みが走る。
「ぐああああああああっ!」
先ほど受けた傷口と交じ合う様に胸を十字に切り裂かれ、地面に転がりのた打ち回るデビモン
「これで終りだ」
輝二がデビモンの額を剣で刺し貫くと、デビモンの体は黒い粒子となり果てた。その今まで浄化してきたデジモン達とは比べ物にならない程の、ドス黒さを持つ粒子を光の剣に吸い込み浄化する。
「ふうぅ〜」
溜め息を吐くと、糸が切れたかのように輝二は、その場に座り込み、休息を取ろうとするが
パンパンパンパンパン
手と手を打ち合わせる乾いた音が、どこからか聞こえてきた。
「誰だ!!」
輝二が叫ぶと、自分から5m程離れた正面の空間に黒い球体が現れ、中から一人の黒い鎧一式に身を包み、相も変らぬまがまがしい暗黒のエナジーをその身に纏った。輝二には忘れようも無い者が現れた。
「ダスクモン!!」