星の光と星の闇・1

日もすっかり消え、空に浮かぶのは雲に覆われた月だけだった。雲に覆われた月明かりに照らされ、ビル屋上からビル屋上へと飛び移るシルエットが浮かび上がる。ミニスカートと一結びにした髪の毛が風に揺らめいていた。影はビルの屋上に着地すると、そこに跪いた。

 

「反応があったのはこの辺りだったな」

そう少し低めの声で、そう言うと影は、どこからとも無く、手の平より少し大きめの機械を取り出し、画面を見つめる。

「デジヴァイスの反応だと、この辺りだな」

影が、そう言うと、月を覆っていた雲が晴れ、影の容姿が明らかになる。艶やかな黒髪を一結びにし、袖の無い白を基調としたセーラー服に藍色のミニスカートと同色のチョーカーとショートブーツ、額には輝く宝石を埋め込まれた金色のティアラ、手首の傍で縁をスカートと同色の藍色で縁取られた短めの白い手袋をし、一見すると、女の子の様に思えるが、彼の名前は源輝二、こんな格好をしているが、小学校五年生で、立派な男の子だ。

 

ドォーーーーン

 

辺りに木霊する爆発音、輝二がビルから辺りを見回して見ると、道路を挟んで向かい側には木々の生い茂った公園、そして、その向こうにそびえ立つビルの壁には大穴が空いており、土煙を上げていた。

「あそこかっ!」

言うやいなや、輝二は、5階立てビルの屋上から飛び降り、アスファルトで作られた道路に音も無く着地すると、木々の生い茂った公園を駆け抜ける。すると公園とビルの間の道路には、骨棍棒を持ち頭に角を生やした緑色の4mはある。巨大な鬼の様な生物が立っていた。

 

「オーガモン・・・どうやら、反応の主はこいつらしいな」

輝二は、そう言うと、両手を開いて、右手が左手の少し上になるように体の前に突き出した。まるでそこにある剣を両手で握るように、輝二が両目を瞑り、精神を集中させると、突き出した両手の中心の何も無い筈の空間が輝き出し、小さな球体は、やがてバスケットボール程の大きな球体になり、輝二の両手を包む、輝二は両手を光の中で握り締め、光の中から取り出しすと、輝二の両手には、一本の金で装飾されたサーベルが握られていた。実体を伴ったサーベルを輝二はおもむろに刃の鍔元を左手で握ると同時に抜き放った。実体を伴った剣と思われたが、そのサーベルは柄を残して、白い光の刃を持つ50cm程の光刃と化した。

 

「さてと、早い所終わらせて、帰らせて貰うぜ」

輝二は不適に言い放つと、オーガモンに切り掛かった。オーガモンの頭を真っ二つにせんと切り掛かる輝二の剣を、オーガモンは骨棍棒で受け止め、力任せに骨棍棒を振り払った。人間の子供である輝二が、力でオーガモンに敵う筈も無く、吹き飛ばされ、ビルの壁に叩きつけられるかに見えたが、輝二は、空中で姿勢を立て直すと、ビルの壁を蹴り、地面とは水平に飛び、剣を握った右手を胸の前に持ってきて、左手は剣の刃の先に添える様に置き、オーガモンに切り掛かる。オーガモンは自分に迫った輝二を叩き落とさんと、振り下ろすが、オーガモンの骨棍棒が切ったのは空、辺りを見渡すが輝二の姿は、どこにも見当たらなかった。

 

「これで終わりだ」

頭上から声が聞こえた為、上を見上げるとスカートの中を露わにし、剣を逆手に持ち、自分の顔目掛け降り立つ輝二の姿だった。

 

輝二の剣は、オーガモンの眉間に深々と突き刺さると、断末魔の声を上げ、オーガモンは黒い粒子となり、四散した。

 

輝二は辺りを見渡し敵がいないのを確認すると、剣を両手で持ち、自分の体の前で真っ直ぐ立てると、両目を閉じ祈るように呟いた。

「この乱され闇に落ちし者の魂を、我が光の剣の力を持ちて浄化する。」

輝二の言葉に答えるかの様に、オーガモンだった黒い粒子が、輝二の持つ光の剣に集まり吸収されたと思ったら、今度は剣の刃から白い光の粒子が空気中に飛散して空気に溶け込むように消えた。

「ふぅ〜、とりあえず、浄化完了」

輝二が背後の公園に背を向け、家に帰ろうとした。その時、不意に視線を感じた。咄嗟に振り返ると背後にある公園の木々が目に入った。

 

「さすが、光の力に選ばれただけあるね、実に見事だよ」

木々のざわめく公園の中から不意に声が聞こえてきた。聞こえてくる声は辺りに木霊し、声の主の位置が特定出来なかった。だが、声を聞く限り、相手は自分とそう代わらない年齢だと思えるが、相手の声には、自分には無い落ち着きの様な物が感じられた。

「どこだ!?出て来い!!」

「ここだよ」

この声だけは、今までの声と違い、声の聞こえてきた方向と、今まで微塵も感じさせなかった気配が感じられたので、声のした方に目をやると、背の高い木の太い枝の上に、黒い影がいつの間にか現れていた。木の上に現れた黒い影は、音も無くアスファルトの道路の上に降り立つと、輝二から、10歩程離れた場所まで近付いてきた。

 

良く見ると、相手は、自分と殆ど変わらない、いや、全く同じ位の背丈で、学年も同じか一個位しか離れていないだろう、顔は目元だけ覆う白い仮面を付けており、伺う事は出来ないが、頭には黒いシルクハットを被り、格好も頭のシルクハットと同色の、黒いマントとタキシードに身を包んでいた。

「やあ、光の力に選ばれた闘士さん」

優しく語り掛けてくる相手に

「お前は何者だ?確かに、さっきまでは、ここら辺に気配は無かった。」

輝二はややきつめに言葉を返す。

「いいや、俺はずっと君の事を見てたよ、色んな意味でね」

「なっ!何言ってんだっ!」

相手の視線から感じられる物に、輝二は総毛立ち、顔を紅潮させ怒鳴る。

そんな輝二を見て、相手は口元に笑みを作る。

 

「そんな事よりも、お前は何者で・・何が目的なんだ?」

「君を助けるのが、俺の目的さ」

すっかり相手のペースに飲まれながらも輝二は、なんとか自分が気になっている事を質問するが、帰って来たのはどこからどこまでが本気か分らない返答だった。輝二は怒りを覚え握り締めた拳をプルプルさせ、輝二の口から怒鳴り声が上がる寸前に、相手から不意に声が掛かった。

「そろそろ人が来るよ」

輝二がオーガモンと戦闘を繰り広げた時の騒音が、辺りに住む寝静まった住人を起こしてしまい、冷静に辺りの気配を探ると、複数人の野次馬が「さっきの音なんだったんだ?」「警察に連絡しといた方が良いんじゃねえの?」などと話しながら、こちらに近付いてくる気配がした。

「それじゃ、またねっ」

不意に相手から声が掛かったので、周囲の気配から、相手の方に意識を戻すと、目の前にいた筈の相手の姿はどこにも無く、辺りに木霊する声だけが聞こえて来た。

「また、会えるよ、それじゃ、またねっ」

相手は気配さえも感じさせずに、姿を消した。

 

後書き・とうとう書いてしまいました。そう、一二です!なんてたって一二、これから、この話も、愛あり、エロあり、涙あり、って感じで書いて行こうと思います。そして二人の姿は黒いタキシードに身を包んだ???さん=タキシー〇仮面 輝二=セーラーウ〇ヌスの格好です。何故ウ〇ヌスかというと輝二に一番似合いそうだからです。一応分らなかった人ように書いておきました。