誤解と真相
「ヤマトく〜ん、これどう?」
「いっ、いいじゃないか」
ヤマトは現在、とある知り合いの、女の子とデートをしていた。
ヤマトは、本当は太一と付き合っているのだが、太一と付き合っているのは、三年前、あの冒険を共にした。仲間だけの秘密で、バンドのメンバーにも内緒である。
そんな中、なぜ、ヤマトが女の子とデートをしているかと言うと、この女の子は、ヤマトのバンドのファンクラブの会長なのである。そんな大事な人物を、ヤマトには、邪険に扱う事も出来ず、メンバーからの、強い後押しもあり、ヤマトはこの女の子と、渋々デートをする事になった。
これが、とんでもない、誤解を生むとは知らずに・・・・
「なっ、なあ、いい加減、休もうぜ」
傍目から、見れば、押しの弱い、尻に敷かれている。金髪碧眼の美形の中学生男子が、可愛い恋人とのデートに見えるが、当のヤマトはまったく、乗り気ではなく、散々買い物に付き合わされて、疲れ果てていた。
「そうね、そろそろ、お店にでも、入ろうか?」
「はぁ〜」
ヤマトは、先程から、持たされている。両手一杯の荷物をようやく、置けると思い、安堵の溜め息をつく
そこは、男女で入るにしても、同姓同士で入るにしても、お洒落な、ファミレス兼カフェの様な、店だった。
三時を回って間もない、時間帯にも関らず、店の中はガラガラだった。
「ここ、私の知ってる中では、とっておきの、穴場なの〜、男の人で、一緒に来たのは、ヤマト君が始めてぇー」
この店のうんちくなんだか、自分のうんちく、なんだが、分からない事を、喋りだす、相手の女の子に、ヤマトは適当に相槌を打って、今日は、何時ごろ切り上げるかの、算段をヤマトがしていると、
店の入り口から、見慣れた人物が入ってくるのが、分かった。
空と太一だった。
「空!太一も!」
ヤマトは驚き、太一も一瞬だけ、驚愕の表情を浮かべていたが、すぐに、普段通りの、表情を浮かべる。お互いの強い信頼から来る。物だった。
「あら、ヤマト、どうして、こんな所に?」
「いや・・それは・その・・えっと・だな」
「あなた、だあれ?ヤマト君は、私とのデートの最中なの?あなた、ヤマト君と、どういう関係?」
「どういう関係って言われても・・・」
ヤマトの隣に座っていた女の子に、突然詰め寄られて、戸惑う空、それはそうだ、本来は大事な仲間、といっても良いのだが、あの冒険を共にした者同士じゃないと、分かり合えない物なので、空はどう答えるか、戸惑っていた。
「俺と空とヤマトは、単なる幼馴染さ」
太一が空に、助け舟を出す。
「ふ〜ん、そうなんだ、そうよね、空さん、あなたとは、仲良く慣れそうね、よろしくねぇ」
女の子の注意が、空に言っている間に、太一はヤマトにウィンクで合図する。ヤマトも内心、かなりホッとしている。
それから、四人で相席にして、盛り上がった後、ヤマトは、女の子に引っ張られながら、店を出て行った。
「太一、だいじょうぶよ!ヤマトに浮気する。甲斐性は無いからね」
かつて、冒険を共にした。仲間に酷い一言を平然と言い放つ空
「分かってるよ空、あの子は、確か、ヤマトのバンドのファンクラブの会長、やってる子だよ」
空は今更ながらに、太一の視野の広さに驚かされた。何度もかつての仲間で、ヤマトのバンドを見に行ってはいたが、さっきの女の子の事は、どこかで、見たような、見なかったような、と頭の片隅に、引っ掛かっていたのだが、太一は記憶してたのだから、さすがだと言わざるをえない、
「でえ、空、相談ってなんだよ?」
「実は、丈先輩の事でなんだけど・・・」
空の悩みは、丈が最近、親の手伝いで、中々合えない、という物だった。以前はそんな事、無かったのだが、つい最近になって、突然の事に、空は、どうしていいのか、分からないと言うのだ。
「丈が合ってくれないかー、ふーーん、そう言われて見れば、もうすぐだったな」
太一は、頭の後ろで手を組み、椅子に寄り掛かり、天井を見上げながら、言う
「何が、もうすぐなのよ?」
「空の誕生日」「あっ!」
「忘れてたのかー!丈がかわいそうだぜ、きっと、あいつは、誠実の紋章の持ち主だから、必死に親の手伝いして、空にプレゼントでも買う金、貯めてんじゃねえのか?」
空は太一の視野の広さに驚かされた。本日二度目
それから、空と太一は、空の家の門限もあり、すぐに、店を後にした。
一方、ヤマトはその頃
「ねえねえ、これなんかどう?」
ヤマト、ファンクラブ会長は、今だ飽きる事無く、ヤマトに荷物持ちをさせ、買い物を楽しんでいた。
「おい!いい加減、今日は、もう帰ろうぜ」
「だーめ」
結局、ヤマトは、女の子に連れ回され、気付いたら、女の子に乗せられ、ヤマトは酒を飲まされていた。
ヤマトは、何とか、酔い潰れずに、女の子に肩を貸して、歩いていたら、女の子の家を自分は知らない事に気付いた。
慌てて女の子を見ると・・・・寝ていた・・・・
「おい!おい!!起きろよ!おい!」
頬をペチペチと叩くが、起きず、両肩を揺らしても、起きなかった。
冷や汗をヤマトは滝のように流し、酔っ払った頭で考える。確か、今日は、親父は局に泊まると言っていた。
だが、若い女の子と、一つ屋根の下、だが、女の子を、路上に放置するわけにも行かない
ヤマトは、悩みに悩んだ挙句、自分の家に泊め、明日の朝早くに帰ってもらう事にした。
結局、ヤマトは、女の子を、散らかった父親の部屋に寝かせる訳にもいかず、自分の部屋に、来客用の布団を敷き、寝かせ、自分は父親のベットで寝る事にした。
翌朝
ヤマトは、二日酔いの、頭痛に悩まされながら、目覚めた。目覚めた瞬間、自分の部屋とは、違う事に気付き、戸惑い、記憶の紐を解いてみて、ヤマトは慌てて、自分の部屋に、行ってみた。そこには、昨日、散々自分を連れまわした、女の子が眠っていた。
「おい、起きろよ、朝だぞ」
「うっ・・・んっ・・あれ?ヤマト君・・・ここどこ?」
「俺の家だよ。昨日、酒飲むだけ飲んで、酔いつぶれて、寝ちゃったから、俺の家に連れてくるしかなかったんだよ、早く帰れよ、家の人心配してるぞ」
昨日の事もあり、ヤマトは、冷た目に、言い放つ、完全に冷たく切り捨てられないのは、ヤマトの優柔不断&情けなさ世界一な所である。
「ごめんね、じゃあ、帰るね、また、デートしてね」
女の子は、飛び起きると、ヤマトは、二日酔いで、フラフラなのだが、二日酔いの様子など、目の前の女の子からは、微塵も感じられなかった。
「おい、下まで、送るよ」
ヤマトは、女の子をマンションの下まで、送る事にして、ふら付く足取りで、何とか、エレベーターに乗り込み、ヤマトはマンションの入り口前まで送った。
「昨日は、わざわざ、泊めて貰って、ありがとね、そうそう、ちょっと前に夢で、ヤマト君に、犯される夢見たんだけど、あれ、正夢だったみた〜い、昨日は最高だったわ、また、デートしようね〜、バイバ〜イ」
突然、女の子は、ある事無い事、いや、無い事無い事を、言い出し、言い終わると、走り去ってしまった。
「えっ!?おっ、おい!!ちょ、ちょ、ちょっと待て!!おい!!」
ヤマトは、走り去る。女の子の背を見ながら、二日酔いとは、別の更に強力な頭痛に、悩まされそうになったのだが、
突然掛けられた声に、考えが中断させられた。
「ヤマト」
突然、後ろから、掛けられた声は、聞きなれている声にも関らず、酷く冷たく感じられた。
ヤマトは恐る恐る、首を壊れた人形の様に、ギギギギと動かし、振り向くと、そこには、口元に笑みを浮かべた。太一がいた。
「た、太一、どっ、どっ、どこら辺から、きっ、聞いてた?」
「ふ〜ん、女の子、家に泊めたんだ」
普段と変わらぬ、笑みを顔に浮かべているが、太一の怒気が、ヤマトには、ひしひしと伝わってきた。
「たっ、太一、こっこれには、深い訳が」
「ふ〜ん、じゃあ、これ、なんだよ?」
太一に笑顔で指摘された。
ヤマトは、今、黒いYシャツの襟元を肌蹴させて着ている。そして、太一に指差された場所を見ると、
ヤマトの目から、目玉が飛び出した。そこには、鬱血した後が残っていた。
ヤマトは、必死に思い出してみる。確か夜中に、首筋に吸い付かれたような、感じがしたが、眠気に襲われて、気にしなかった。
だが、最後まで行くなどと言う事は絶対に無い、もし、最後までいってたら、さすがに、起きてる。
「たっ、太一、これは・そっ、その・おっ、おち、おち、落ち着け、今、訳を・話すから」
太一は、口元に不自然な程の、笑顔を浮かべているが、背後には、怒りの炎が燃え上がっていた。
「ヤマトこそ、落ち着けよ、俺は落ち着いてるからさぁ〜」
太一の、底冷えする程の、冷たい声に、ヤマトは、冷や汗をダラダラと、滝のように流しながらも、何とか、弁明しようとする。
「昨日、一緒に買い物した女の子なんだけど、えっと、その、なんていうか、」
ヤマトはいかに、女の子を家に泊めた事を、ソフトにソフトに伝えようと、二日酔いの頭を回転させるが、
考えれば考えるほど、頭が真っ白になり、言葉が見つからなかった。
「ベットでやっちゃった」「そう、ベットでやっちゃったんだよ・・・はっ!!」
太一に突然言われた言葉に、そのまま反応してしまったヤマト
「いや、違う、ベットじゃなくて、敷布団で・・・じゃなくて!!ベットでも、布団でも無くてだなあ!!・・・たっ、太一、おち、おち、落ち着け・・・ごっ、誤解だから、はっ、はっ、話し合おう、なっ、なっ」
ヤマトの頭は、大混乱に陥っていた。ヤマトは両手を体の前に突き出し、両手の平を太一に向け、
太一を宥めようとするが、
ブチン、太一の堪忍袋の緒が、とうとう切れた。
「ヤマトのバカヤローーー!!」
二日酔いの頭に直撃した。太一の怒声&鉄拳
太一の怒りの鉄拳を、まともにくらい、ヤマトは吹き飛ぶ
太一は踵を返して、走り去ってしまった。
「太一!待ってくれーー!!誤解なんだーーー!!!タイチーーー!!」
ヤマトは、両膝をと左手の平を地面付け、右手をはるか彼方に見える。太一の背に伸ばし叫ぶが
無情にも太一は一度も振り返る事無く、走り去ってしまった。
後書きと言う名の言い訳・この後、ヤマトの誤解は、丈と空の、愛情、誠実、コンビによって解かれ、ヤマトと太一は、無事お付き合いを再開しました。めでたしめでたしっとなります。