二人だけの戦争・5
「ハァハァハァ」
両手の平を地面につけ、アスランは荒く息を吐きながら、自分の下に横たわって気を失っている少年を見る。
肌蹴られた上着と膝下まで脱がされたズボン、自分と相手が放った残滓で汚れている少年。
そして、自分が数分前に少年に対して行った事・・・
「うぷっ!」
こみ上げてくる吐き気にアスランは慌てて口を手で押さえる。
幸い反吐をする事は無かったが、今までに感じたことの無い胸の痛みと罪の意識がアスランの胸の内で渦巻き心を締め付ける。
「お・・おれは・・・なんて・・・事を・・・」
キラから離れて、震える自分の両手の平を見つめる。
今までモビルスーツに乗って幾多の人を殺してきた筈なのに感じた事の無い罪悪感
割れそうに痛む頭に両手を両目の上に持っていき、その場にうずくまる。
暫くしてアスランは体を起こすと、腰のホルスターから拳銃を抜いて
自分の顎に下から宛がうが、いつまでも銃声は聞こえてこなかった。
やがて、アスランは銃を床に置くと、そばにあるカバンからタオルを取り出し、自分のそばで気を失って横たわるキラに近づく
「んっ・・・・はっ!」
キラは目を覚ますと、自分の顔の前に置いてある銃の存在に驚き跳ね起きる。
すると、自分の四肢を縛っていたワイヤーが無くなっているのと、自分の服装が元あったように戻されているのに気付く
念のため手袋を少し捲ってみると、確かに手首にワイヤーの跡と自分の体に残る感触から、先ほどあった事が現実だと言う事を確信させる。
しかし今は両手両足共に自由に動く状態だった。
続いて辺りを見回すと、すぐソバに先ほど、自分に乱暴を働いた相手の姿が目に入るが、相手は両膝を両手で抱え、その両膝の間に額を落としていた。キラのいる場所からは相手が起きてるのか、寝ているのかも分からず、何より自分のそばにどうして相手の拳銃が置いてあるのかもキラには分からなかった。
「ね・・ねぇ・・・」
キラから躊躇い勝ちに声をかけてみると、アスランはゆっくりと頭を上げてキラを見る。
「気がついたのか・・・」
相手がキラを確認すると、生気の無い目でキラを一瞥して視線を逸らすと
「さあ、俺を・・・殺せ・・・俺は君に・・・とんでもない事をしてしまった」
生気のない声でそう漏らした。
「な、何言ってるんだよ!?」
先ほどまでの様子が嘘のような相手の余りの変わりように戸惑いながら、キラは相手の両肩に手をかけて揺さぶりながら相手の名前を呼ぶ。
「アスラン!アスラン!!」
アスランは再びキラを一瞥すると、自分の頭を両手で抱えながら、キラに背を向けてしまった。
「俺は君に・・・とんでもない事をっ!・・・」
「分かった」
キラが短くそう言って、自分から離れるのを感じたアスランはキラの方を見ると
先ほど自分が置いた拳銃をキラが拾い上げているのが目に入った。
「アスラン・・・立って」
自分の方に拳銃を向けながら言うキラにアスランは黙って従った。
アスランが立ち上がったのを確認すると、キラは左手に持った拳銃をアスランの眉間に突きつけた。
キラの左手に持った拳銃の銃口はアスランの眉間の2,3cm前にあった。
アスランはキラに自分がした事を思えば、これは当然だと思い両目を閉じて、トリガーが引かれるのを後は待つだけだった。
ヒュッ!
聞こえてきたのは何かが風を切る音、気になり目を開けた瞬間
バキッ!!
アスランは自分の頬に激痛が走るのを感じると、同時に目の前が真っ白になり景色が回転して砂浜に転がった。
キラの方を見ると、どうやら自分は殴られたらしく、キラが右手の拳が振りぬいた状態のまま立っていた。
アスランのそばにキラが歩み寄ると
「立てる?」
キラが柔らかい表情を浮かべながら、アスランに手を差し伸べた。
「キラ・・・何を?」
「ごめんね。思いっきり殴って、でも、これでさっきの事は許してあげる」
キョトンとしているアスランに柔らかい表情を浮かべて、手を差し伸べるキラの表情に押されるようにキラの手を取って立ち上がるアスラン
「僕・・・本当に嫌だったら、舌噛んでたよ・・・」
自分から顔を背けながら、ボソボソっというキラの方を見ると
キラの耳が真っ赤になっているように見えたのは夕日のせいではないっと思いたいアスランは
「キラッ」
キラの事を後ろからきつく抱きしめた。
あとがき・なんだかスランプを感じた話ですが、何とかお話は出来たのはアップします。後は救援が来るまでの無人島での二人きりでのお話や、無人島での二人きりでのお話や(大事な事なので二度言いました)キラは何故ゲリラ活動をしているのか?とかアスランとの今後とか色々と話の構成はあるので書いていけたらなっと思います。