二人だけの戦争・12
自分がオーブの人間であるとアスランに打ち明けてから今日で二日が過ぎた。アスランが自分もキラについていくと言ってから「三日だけ待ってくれ」と言われたので、キラは三日だけ待つ事にした。昨日、一昨日とアスランは訓練を終えて部屋に戻ってくると、真っ先にベットに入り眠りに着く、その後、深夜にこっそりと部屋を抜け出しては、夜中に帰ってきて朝まで眠る。そんな事を今日で三日間も続けていた。
「キラ、今日の夜にここを脱走する」
「アスラン・・・本当に良いの?」
「ああ、軍に未練なんて無い。ただ・・・出来れば穏便に出て行きたいな」
「分かった」
この基地の軍属のアスランが居なければ、自分一人だったら穏便に出て行く事も可能だったと思うが、軍属のアスランが一緒となると、やはり色々な不都合が出てきたが、それも仕方ないと思い、この三日間アスランは脱走の準備をしていたのだろうと、アスランの行動から予想はついていた。
アスランはベットの下から大きなショルダーバックを取り出すと、何かを投げてよこした。
「キラこれを」
そう言って渡されたものを確認しているキラに
「ここを無事に脱走するには、やっぱり、モビルスーツが必要になるみたいだからな」
そう付け足すアスランは、すでに赤服を脱ぎ出し、キラに渡したのと同じ赤いパイロットスーツを着だしている。キラもアスランに習いパイロットスーツを身につけていき、パイロットスーツを着終わると、アスランはショルダーバックの中から、拳銃や分解されたアサルトライフルを取り出し、手際良くキラの分と自分の分を組み立てて行く。
キラは手渡された拳銃のスライドを引いて、拳銃と一緒に渡されたベルト付のホルスターに治めると、アサルトライフルをショルダーから掛けて、弾装をセットして、セイフティを掛ける。
キラのこの辺りの銃の扱いの手馴れた感じや、最初あった時の射撃を見ても、キラはキチンと軍隊の訓練を受けた事があるというのが分かる。まだ中に色々なものが入っているショルダーバックを肩に掛けながらアスランも拳銃を腰のホルスターに治めると、今度は黒いコートをキラに投げてきた。
「それを着たら出発だ」
アスランはパイロットスーツと一緒に用意しておいたマントのように長いフード付の膝下丈の黒いロングコートを首もとのボタンだけをしめて翻す。夜の闇に溶け込みやすいようにというアスランの意図を理解したキラもアスランに習う。
見回りの兵士以外、ほとんどの人間が床についている時間帯にアスランのプライベートルームを後にした。銃を携帯し、黒いコートの下には赤いパイロットスーツを着ている二人、しかもその内の一人は身分を証明するIDの無い人間。見つかれば言い逃れが出来ないのは明白なだけに、二人は慎重に格納庫へと近付いていく、三日間の内に出きる限り見回りの兵士の行動を把握しておいたアスランは、見つかる可能性が低いルートを選んだつもりだが、やはり、途中途中で見回りの兵士を隠れてやり過ごすハメに何度か遭遇したが、何とか目的の場所に到着する。
この三日間の内にモビルスーツの格納場所なども調べておいたアスランは、すぐに格納庫内にあるモビルスーツを起動させる。キラの記憶が確かだったら、この機体は飛行能力を有するディンと呼ばれるタイプの機体だった気がした。まずは基地から出きるだけ遠くへ離れるっという都合上、アスランはこのモビルスーツを選んだのだろう。コックピットに座って調整作業を行っているアスラン、その手の指が高速でコックピット内の端末のキーを叩き調整をしている。
アスランがコックピットの席に座るすぐ脇でキラは、格納庫の入り口の方を見ながら、見張りを行っていると、遠目に何かが動いた気がしたので、バックの中から双眼鏡を取り出して覗き込む。
「アスラン!誰か来たよ」
「何っ!・・クソッ!もう少しだというのに」
キーを叩く手が更に早まり、傍目にもアスランの態度に焦りが出たのが分かった。
「キラ、人数は?」
アスランに言われて、暗視機能付の双眼鏡を覗き込むキラ
「今の所・・・一人みたいだね」
キラに言われて確認するように双眼鏡をキラの手から取り覗き込むと、確かに一人に見える。
「キラは、ここにいろ」
言うやアスランはコートのボタンを外すと、ホルスターに入っている拳銃を確認して、開いているコックピットから飛び降りた。
格納庫の入り口から顔だけ出して覗き込むと、確かに一人の兵士がこっちへ向かってくるのが分かった。拳銃をいつでも抜けるようにして気配を消すと、相手は予想外にも格納庫の方へ来ると思いきや、直角に方向転換し、別の方向へと歩き出した。ホッと胸を撫で下ろすと、すぐにコックピットに乗り込み。作業を続けると、数分後に準備が整った。
「行くぞキラ、しっかり捕まってろ」
ヘルメットのシールドを下ろしながら、傍らにいるキラに声を掛けると、キラが頷くのを確認すると、アスランはディンを発進させた。飛行能力を有するだけあり、あっという間に基地から飛び立つ事に成功する。途中、無線機から管制官の慌てた声が聞こえたが、すぐに無線をオフにして、アスランはディンの操縦に専念する。特に追手が来ていないかはレーダーをいつも以上に確認しながら、使い慣れていないモビルスーツの操縦を行っているので神経を使う。
「それでアスラン、どこに行く気なの?」
「まずは基地から離れて、連合軍の戦力圏ギリギリの場所に行く、そしてそこの近くの小さな港街で船に乗る。それでオーブに行く」
キラの質問にアスランはいつの間にか持っていたハンディ端末に地図映し出す。
ちゃんと逃走経路も考えていたらしく、三日間で考えた計画の割には今の所、滞りが無いように思えたが、コックピット内に警報アラームが鳴り響く、キラはこのアラームの意味が分からず、困惑するが、アスランはレーダーに映し出された機影を見て、すぐに事態を把握する。
「地球軍・・・こんな時に」
アスランの声に明らかに苛立ちが混ざるが、アスランが凝視しているレーダーをキラも見て、どうやら敵は三機いるらしく、こちらよりも多いのが分かった。
「キラ捕まってろ、悪いけど、落とさせて貰う」
さすがにディンが高速で飛行しているだけあり、すぐに地球軍の戦闘機三機の編隊と遭遇する。敵もアスランとキラの乗る機体の存在に気付いていたらしく、機銃を掃射してくるが、アスランの赤服は伊達じゃないらしく、慣れない機体でも避わして、あっという間に二機の戦闘機を機体に装備されているマシンガンで撃墜するが、最後の一機だけはそうもいかなかった。敵の戦闘機の機銃に機体の背部にある翼を撃ち抜かれ明らかに機体のバランスが崩れ、高度が下がっているのが分かったが、アスランもマシンガンで反撃し、何とか最後の戦闘機を撃墜する事に成功する。
機体の建て直しにコックピット内の操作を色々とするが、どうやら建て直しは不可能らしく。
「キラ捕まってろ!不時着する!」
言うや、キラはアスランの胸元に抱き寄せられると、コックピット内のアラームがけたたましく鳴り響き、地面に機体が叩きつけられるように不時着した。
あとがき・はい、何とか月に2更新を守るべく、三週間目の頭で更新が完了しました。さあいよいよこの物語も終わりが近付いてきました。この物語も終わったら、デジモンの更新や他にもヴァイスクロイツの方など色々と書きたい話があるので、頑張ってやっていこうと思います。どうか皆さん宜しくお願いします。