二人だけの戦争・11
アスランが情けない告白をしてから数日、二人の間には平穏な日常と呼ばれる時間が流れていた。
アスランが軍隊の規定通りの訓練を終えて夕方に部屋に帰ってくる。そして、そのアスランの帰りをキラが部屋で迎える。
そんな日々の中で、一日中部屋の中で過ごさなくてはならないキラには不自由をかけているとアスランは思っているが、キラは文句一つ言わなかった。告白をしてから数日後にキラに口付けをして、キラの体を求めた時は応じてくれた事から、告白に対してキラからの正式な返事は受け取っていないが、少なくとも自分の事を体を許す程度の中である事に僅かな安堵を覚えるアスランだった。だが、その平凡な日常も終わりを告げようとしていた。
ある日、訓練を終えて戻ってきたアスラン、扉を開けると、普段はキラが迎えてくれるはずなのに、その日に限ってキラは出てこなかった。不審に思い部屋の奥に入っていくと、テレビを置いてある部屋のソファに座って、キラがニュースを帰って来たアスランの存在に気付かない程、熱心に見ていた。
「あっ!アスランお帰り」
傍らに立つアスランの存在に暫くして気付いたキラは、いつも通りの表情で迎えてくれる。
「あ、ああ・・・ただいま・それよりキラどうしたんだ?何かあったのか?」
「ううん、なんでもないよ」
勤めて明るく答えるキラの表情には、僅かな陰りが浮かんでいた。
その日の夜、アスランの予想もしない事が起こった。キラに名前を呼ばれるや、キラが自分から胸に飛び込んできた事、そして瞳を閉じてキスをねだると、そのまま誘われた事だった。余りの事にどこかおかしいとは感じながらも、夢中でキラを抱き、キラは壊れていった。
その夜、眠るアスランの脇で目を覚ましたキラ
「ごめんね・・アスラン」
隣で眠るアスランの顔を見た後、アスランに背を向けて、そっとベットを出ようとしたキラの手首をアスランが掴んだ。
「キラ・・・どこへ行くんだ?」
「アスラン!・・・起きてたの?」
手首を掴まれたままの状態で目を見開いた顔でアスランを振り返る。
「キラ・・どこへ行くんだ?」
アスランは上体を起こしながら逃げる事を許さない険しい表情でキラを見る。
「ごめんアスラン・・・僕・・もう行かないといけないんだ・・・君の事は・・・好きだけど・・・それでも僕は行かないといけないんだ」
「行くってどこへ?」
「ごめん・・・君に教える事はできない」
そう言って困った顔をして俯くキラ
「俺と一緒にいるのが嫌になったのか?」
俯きながら首を振るキラ
「じゃあ、どうして黙って出て行こうとする?」
「君に教える事はできないんだ・・・ごめんね」
相変わらずアスランを見ようとしないで俯いたままのキラに
「黙って出て行くなんて・・・そんな事を許すと思っているのか!?」
アスランは掴んだままだった手首を引っ張り、強引に自分の方へキラを抱き寄せながら声を荒げると、ようやくアスランの方へ顔を向けたキラの瞳が潤んでいる事に気付く。
「キラ・・・」
キラの悲しみを浮かべた顔を見て、アスランは何も言えなくなった。
僅かな静寂の後にキラは呟くように小さい声で語りだす。
「アスラン・・・君と無人島で出会ってから・・・ここにきて・・本当にここで過ごした数日間は楽しかったし・・・・平和な日々で・・・今までいた世界から解放されたような気がしたんだ・・・」
「じゃあ・ずっとここにいれば良い!君は俺が守るから!」
「ダメなんだ・・・僕には大切なものが・・・守りたいものがあるんだ・・・いつまでもここにいる訳にはいかないんだっ!」
瞳から涙を溢れさせて叫ぶキラ。そんなキラの様子を見て呆然としてしまうアスランだが、それでもここで引き下がる訳にはいかなかった。ここでキラの手を離したら二度と会えなくなるという現実がアスランを動かした。
「キラ話してくれ・・・君の力になりたい・・・」
アスランの硬い決意を浮かべた表情を見て、キラは何度か視線をアスランの顔を見ては俯きを何度か繰り返した後、躊躇いながら話し出した。
「僕は・・・オーブの人間なんだ・・・夕方に見たニュースで地球軍がオーブに侵攻を開始するって・・・だから・・・僕はもう行かないといけないんだ・・・ごめんアスラン」
そう言って手首を掴むアスランの手を離そうとするキラに、アスランはキラの手首を掴む手に更に力を込める。
「アスラン?」
「俺も君と一緒に行く」
先ほどより一層硬い決意を浮かべた表情でキラを見るアスランに、どうして?と顔に浮かべたキラに
「キラ・・・以前君は俺に何の為に戦うのか?って聞いたのを覚えてるか?・・・キラと一緒に言ったら・・その答えが見つかる気がするんだ・・・だから君と一緒に行きたい」
アスランの何があっても一緒に行くと言っている表情を見て、何を言っても無駄と悟ったキラは。
「分かった。じゃあ・・・よろしくね」
そう言って苦笑するだけだった。
後書き・どうも勢いだけで書き上げた11話目です。どうもどうも皆さん、一話当たりの容量が小さい為、無駄に話数だけを重ねているお話ですが、やっぱり、これ位の容量が一番疲れずに読めると管理人は思っているので、この辺りで区切っています。容量が小さいせいで中途半端な区切りをしているという突っ込みはご了承下さい。さて、いよいよキラの正体が徐々に見えてきました感じですね。では皆さん、ご愛顧とBBSで管理人に絡んでくれたりすると喜びます。それでは失礼します。