二人だけの戦争・10
「んっ・・・・」
目を覚ますと同時に気だるい疲労感の残る体に先ほどまでの情事をアスランは思い出す。
胸の中を空しさが支配するが、自分のすぐ隣で安らかな顔で眠る相手を見つめて頬に手を伸ばす。伝わってくる温もりに胸の中を今度は安堵の思いが満たしていく。
ずっとその寝顔を見つめていたい思うが、訪れた喉の渇きにアスランはベットを出た。
脱ぎ散らかっている服の中から、手早く自分のインナーウェアと赤服のズボンを拾い上げて身につけると、今度は部屋の備品として配置されている冷蔵庫を開ける。中にはミネラルウォーターのペットボトルが数本入っていて、すぐにその一本を飲み干すと、冷蔵庫の中に食べ物らしい食べ物が入って無かったのを見て、空腹感を自覚する。眠るキラを残していく事に不安を覚えるが、キラもお腹が空いている事だろうと思うと、アスランは赤服の上着を着込み基地内にあるストアに行く事にした。
「んんっ・・・」
アスランが部屋を後にしてから、数分後に今度はキラが目を覚ました。体を起こそうとするが、腰の辺りに鈍痛と腰が鉛になったのでは錯覚する程の重みを体に感じて、体を起こす事に失敗した。何とか両手をベットについて、両手の力で上体を起こす事に成功すると、部屋を見回してアスランがいないのに気付く、それと同時にベットの脇のサイドテーブルの上に水の入ったペットボトルが置かれているのが分かった。
キラは水の入ったペットボトルを見て喉の渇きを実感する。キラはペットボトルに手を伸ばすと、ペットボトルの下に敷かれている書置きが目に入った。キラはペットボトルと書置きを手に取り、書置きを見ると「すぐ戻るから待っててくれ」とだけ書かれていた。キラは喉の渇きを実感し、すぐにペットボトルの中身が空になる。
「ふぅーー」
空になったペットボトルをサイドテーブルに置きながら、キラは一息をつくと、壁に手をついて苦労しつつも何とか立ち上がり、ベットから抜け出す。ふらつく体を何とか壁に手を突いて支えながら歩き出した。
ドサッ
部屋の床に何かが落ちた。
アスランが自分のプライベートルームに帰ってきて、ベットのある一番奥の部屋の扉を開けると、ベットにキラの存在が無いのを見て、ショックの余り買った物が入っている袋を落とした音だった。だが、自分の立っている場所の左後方にある部屋から聞こえてきた水音にアスランは冷静さを取り戻した。
(シャワールームにいるのか?)
そういえば、自分も情事の後に汗で体がベタベタしていたが、キラの為に買い物に行った為、シャワーを浴びてないのを思い出したが、とにかくキラの所在を確認しなくてはと思い、シャワールームへと通じる扉を開ける。
扉を開けると、洗浄機や乾燥機などを置くスペースが設けられているらしく、シャワールームの前は一辺が3m四方の広めの空間となっていた。
そして奥に半透明なガラスの二つ折りの扉の向こうで水の流れる音とキラと思われる人物が動く姿がガラス越しに確認できた。
二つ折りの扉を開けると
「キラ・・」
中にいた人物を確認すると、背後から静かに声を掛けた。
「アッ!アスラン!・・・ちょっ・・・ちょっと」
落ち着いてキラの事を見るアスランに対して、シャワーを浴びていて全裸のキラは慌てて背を向ける。
「キラ」
「ちょっ・・ちょっと・アスランッ!」
声を掛けながらキラに近付くアスランに対して、突然の事態に慌てふためくキラは背後からアスランに抱きしめられる。シャワーの水が流れっぱなしでアスランの軍服を濡らしていくがアスランは気にせずに、濡れたキラの体を背後から抱きしめる。
「ちょっ・・ちょっと・・・アスラン・・・やめてっ」
ナチュラルとコーディネーターの差と身長も相手の方が高いからと、先ほどまでの情事による消耗からキラは簡単にアスランの手の中に納まり、キラを抱きしめる手が卑猥さを増す。
「アスラン!やめてって言ってるだろっ!」
手を突き出して、アスランを突き放す。
「僕はアスランのオモチャじゃないんだっ!・・・いつも・・いつも・・こんな事ばっかりしてアスランは僕の何なんだよっ!」
両手を胸の前で交差して、俯き加減に叫ぶキラ。
沈黙が場を支配する。
「ご・・・ごめん・・・そ、そんなつもりは無かった。・・・ただ・・・キラの事が・・・す、好きだからっ・・・つい・・・すまない・・」
俯いた顔を上げると、すまなそうなに顔を歪めたアスランと目があった。
初回にレイプされて以来、こういう時は腕力の差で相手の成すがままにされていたが、まさかこんな形で告白されるとは思っていなかったキラ。今までもされている事がされている事だけに、本当は相手の事を憎く思う筈なのに、情事の時に感じる優しさや普段の生活面で垣間見る相手の思いやりに、今一つ相手の事を憎みきれずにいた自分。そしてこういった性的な事以外では、相手の事は嫌いではなかったし、むしろ好感を持っていた所もある。
「はぁ〜・・・分かったから・・・アスラン・・シャワー浴びさせてくれる?」
「あっ!・・・ああ・・す、すまない」
キラは盛大にため息を吐いてアスランをシャワールームから追い出す。
思わず情けない告白してしまった自分。そしてその時のキラの反応、自分は好かれているのか?それともキラは今までの事を許してくれているのか?色々な事が頭の中を巡っては消え巡っては消えをして、まともな思考がショートしているアスランはシャワールームから出た後、暫くの間びしょ濡れの軍服を着たままシャワールームの前でボーっと立っていたアスランは、次の日からクシャミの止まらない日が数日続いた。
あとがき・はい、どうも!ようやくヘタレ系のアスランは告白をしました。自分としては腹黒なアスキラを書きたいと思っていたのですが、何だかんだで情けない感じになってしまいました。追々とアスランの方も成長していき、何とか精神的にも腹黒い面を出していけたらなと思っています。さてそろそろ追々ですが、キラの正体なんかも明かして生きたいと思います。皆さんご愛顧のほど宜しくお願いします。