剣の主と剣の行方・5

 

死んだと思っていたリオンが、今、目の前にいる。この状況を、その場にいた三人が三人とも、この状況を信じる事が出来ず

「リ・・リオン」

「リオン君・・・生きていたのか・・・」

驚愕し、相手の名前を呼ぶスタンと冷静に状況を理解しようとするウッドロウ。

 

僅かな時間だが、リオンが生きていたという事実にスタンの胸の中に段々と喜びが湧き上がってくる。

「リ・・リオン、生きていたのか」

スタンが歓喜に満ちた声を上げて、リオンに近づこうとするのを、リオンは剣の切っ先を相手に向け牽制する。

 

「リオン?」

黙って自分に剣を向けるリオンに戸惑うスタンだが、自分を無表情に見る相手の顔にも戸惑っているのが分かる。

無言でぶつかるスタンとリオンの視線。互いの表情には戸惑いが浮かんでいるが

 

「ちょっとあんた!」

脇から威勢の良い声がかかった。声のした方を見ると、いつものように苛々している様子のルーティがいた。

ツカツカとリオンに近づいていくルーティに、今度はルーティの方に剣を向けるが、お構いなしにルーティは近づき、剣の切っ先を手でそっとどけて、リオンに近づくと

 

パンッ!

 

リオンの頬にルーティの平手打ちが炸裂した。

 

叩かれた頬を抑えるリオンに

「生きてるなら、どうして生きてる位言わないの!?今のは、昼間、私のお腹を殴った罰よ」

ズビシとリオンに指を突きつけながら言い放つルーティ。その様子は、まるで聞き分けのない弟に諭す、厳しい姉のようだった。

 

叩かれ戸惑っていたリオンだが、次第に悲しみや苦しみと言った表情で

「す・・すまない・・・僕には・・・今更お前たちの前に出てくる資格なんてないのは分かってた・・・ただ、お前たちの無事な様子を見に来ただけだった・・・すまない」

顔を俯けながら、裏切った事に対する謝罪をするリオンに、場が悲しい空気に支配されたが、その場を動かしたのはルーティだった。

 

目の前と言って差し支えない距離にいたルーティは

「本当に・・・生きてて良かった」

目に涙を浮かべ喜びと悲しみが混ざった声で呟くと、ギュッと目の前にいるリオンにルーティは抱きついた。

「なっ!・・・」

咄嗟の事に戸惑うリオンだが、ルーティを引き剥がそうとする訳ではなく、どうして良いかが分からないといった様子だった。状況を察したウッドロウがスタンに我々は席を外そうと呟くと、リオンとルーティをその場に残し、二人はその場を離れた。

 

「リオン・・・私達は・・この世に残された。たった二人きりの血の繋がった家族なの・・・これからはもう絶対に離れないわ・・・私には・・スタンやマリー、フィリアやウッドロウのように沢山の仲間がいるわ・・・でも、もう血の繋がった家族は・・・誰一人としていないと私は思っていたわ」

抱きつきながら、耳元で自分にだけ聞こえるように呟くルーティ、そして密着していると、ルーティが震えて泣いているのが分かった。

 

そっとルーティの腰の裏側に手を回すと

「ね・・・ねえ・さん」

リオンは戸惑いながら呟いた。思わずルーティの体がピクリと跳ねるが、今はただ姉弟二人で再開の喜びを、ただ抱きしめ合う事で共有した。

 

あとがき・はい、リオンとルーティ、姉弟の感動の再会でした。はい、とりあえず、一段落ですね。とりあえず(二度目)リオン君の生存をかつての仲間にお知らせする事ができました。