剣の主と剣の行方・4
王都ダリルシェイドにて、スタン達と望まぬ一戦を交えてしまったリオンは、日が沈むのを待っていた。どこの国にもあるように、繁栄という光の陰には必ず闇が存在するように、ダリルシェイドの街にも、その闇と言われる部分が存在する。リオンは王都の中にある治安の悪い一角に身を潜め、日が沈むのを見計らって、ダリルシェイドを脱出しようとしたが、暗い街を歩いていて妙な事に気がついた。
(おかしい・・・)
昼間、英雄を襲撃事件が起きたというのに見回りが強化されている様子がなかった。通常、王都で何か物騒な事件が起きた時は、夜間に巡回する兵士達の小隊がいるものだが、別段警戒されている様子のない街を見て、リオンは内心不審に思いながらも、かつて父であるヒューゴから聞かされていた場所に向かう。リオンは城壁の抜け道がある場所につくと、辺に人気がない事を確認したあと、目の前の石畳の壁の中にある一つだけ出っ張ったレンガをリオンが押そうと、手を伸ばしたら・・・
ザッ
おそらく、ずっと気配を消して隠れていたのだろう
「まさか・・・本当にリオン?・・・なのか?」
背後から声がかかった。振り返ると、そこには昼間、剣を交える事を避けた人物が驚愕の表情を浮かべ立っていた。
「彼がこの場所に現れた事が何よりの証明。この場所を知っているのは、王と七将軍だけと聞いている。おそらくヒューゴから聞いていたという事だろう・・・そうだろうリオン君」
無言で声のした方を見ると、そこには腰には剣を刺し、弓を片手に持った状態で立っているファンダリア王、ウッドロウの姿が目に入った。
(さすが賢王と言われるだけの事はあるな・・・おそらく、ここでの待ち伏せは、この男の入れ知恵か・・・)
リオンはマントの下で両手を剣の柄を握り締めると
「リオン!どうしてだ?なんで俺たちが戦う必要があるんだ?もうヒューゴはいない!それなのにどうして?」
スタンは腰の剣を握る様子を見せず、ただ訴えかけてきた。
スタンのそんな様子に相変わらず甘い奴だとは思ったが、前は苛々した相手の甘さを見て、今は苛々しない自分に気づく
「あんたもいい加減、潔く観念しなさい!リオン!」
今度は弟を諭す口調そのままと言った様子の声がする。声のした方を見ると、予想通りの人物がそこには立っていた。
(ルーティ・・・)
自分はどうしたら良い?素直にこいつらの前に出て行くべきなのか・・・それとも・・・
(今は捕まる訳にはいかない)
そう思い剣を抜き放つリオンに、戸惑い剣を抜けずにいるスタンだが
「スタン君!」
ウッドロウからの一喝に我に返り、剣を抜き構えるスタン、その脇ではルーティも剣を抜いている。そしてスタンとルーティの数歩後ろではウッドロウが弓に矢を装填し、こちらに矢を向けていた。
「リオン君、君なら分かるはずだ。この状況で勝ち目がない事位・・・大人しく投降してくれないか?」
ウッドロウが最後の警告だよと言わんばかりに言い放つが、リオンは剣を抜き放つ事で答えた。
「仕方ない」
ヒュンっという風きり音がすると、ほぼ同時に自分の足元に矢が突き刺さっていた。
「悪いけど、場合によっては手足のどちらかを射させて貰う」
ウッドロウの目が今までの諭す目とは違い、険しい目つきに変わり、明確な敵意を表す。
「でりゃあぁ!」
気合と共にスタンの剣がリオンに襲いかかる。自分に振り下ろされてくる剣をリオンは剣と短剣を十字に交差させて受け止めると、今度は背後からルーティの蹴りが自分の腹部めがけて飛んでくるのを、蹴りが飛んでくる方とは逆に飛ぶ事で回避するが、リオンの背には城壁が立っていた。次は逃げ場がない事が確定し、その時、顔に飛んでくる矢を咄嗟にリオンは避けたが、それでも紙一重で避わすのが精一杯で目深に被っていたフードが、ウッドロウの放った矢で割かれてしまった。
とうとう、このメンバーの前に顔を晒す事になってしまったリオン・・・
「「リオン・・・」」
スタンとルーティの声が重なった・・・
(僕は今、一体どんな顔をしているんだろうか・・・)
リオンの望まぬ形での再会だった。
あとがき・はい、割とあっさりと仲間との再会を果たしたリオンでした。ちゃんちゃん(効果音)なんて言ってますが、まだ続きます。