One step
「たっく、ミカゲの奴なんだってんだよ」
誰に言うともなしに一人不機嫌につぶやくテイト
「よっ、テイト、実技の時間、どこ行ってたんだ?」
テイトの不機嫌の原因であるミカゲが実技の時間が終わったらしく、いつもの通り愛想の良い笑顔を浮かべながら話しかけてくる。
「別にどこだって良いだろ」
そっぽを向きながら素っ気無く答えるテイトを見て、ミカゲはくすりと微笑む
「な、何がおかしいんだよ?」
やや声を荒げてミカゲに詰め寄る。
「いや、悪い悪い、なんだか拗ねてる子供みたいでよ」
「なっ、子供っ!」
テイトの不機嫌を他所にミカゲはテイトの肩に手を回して
「それより飯食おうぜ、テイトは良いけど、俺は実技が終わったばかりで腹が減ってるんだよ」
そのまま食堂へと歩き出す。
食堂で出されたものを食べつつ(今日もテイトは自分で決めた)
テイトは自分の正面に座るミカゲをチラチラと見る。
「ん?どうかしたか?さっきから俺の事チラチラ見てるようだけど」
「べ、別にどうもしねえよ」
自分に送られる視線に気付いて、テイトの方を見ると、ミカゲの視線は自分を見ていたテイトの視線とぶつかった。
視線が合ってばつの悪いテイトはそっぽを向きながら答える。
「この間の事、気にしてるのか?」
言われた途端に体をビクンっと硬直させるテイト、そして思い出した事で、顔が見る見る紅くなっていく
「ははは、テイトって意外と分かりやすい奴なんだな」
「ななな、なんだってあんな事したんだよ!」
思い出すのは先日の屋上で奪われた唇
「ここじゃ、なんだろ」
ニコニコしつつも周囲に気を配るミカゲ、テイトは場所を弁えずに大きな怒鳴り声を上げたせいで、周囲から注目の的になっているのに気付く
「あっ・・・・」
「とにかく場所が悪いから移動しようぜ」
席を立つと歩き出すミカゲの後を追う、行き先は言うまでも無く、テイトお気に入りの場所でもあり
テイトのミカゲに対しての罰の悪さの原因にもなった出来事が起こった場所
テイトがいつものように腰を下ろすと、その隣にミカゲも腰を下ろす。
テイトの左手にミカゲが自分の右手を重ねると、テイトはビクンっと体を硬直させる。
着用を義務付けられている白い手袋を通して感じるお互いの体温
「お前の事が好きだから・・・じゃ、理由になら無いか?」
言われてから、ずっと見ないようにしていたミカゲの方を向くと
今まで以上に真っ直ぐにテイトを見るミカゲの目と会う
ミカゲの顔が段々と近づいてくる。顎に手を添えられる。そして閉じられる瞳につられ自分も目を閉じる。
唇に感じる柔らかく暖かい感触、忘れるはずも無い、数日前に僅かな時間だけど味わった感触
ミカゲの唇から唇が開放されて、目を開けると、自分の事を見てるミカゲが目に入る
「嫌だったか?」
「わ、分からねえよ、そ、そんな事・・いきなり言われたって・・・」
ミカゲの事を直視していられず、そっぽを向きながら頬を紅潮させて答える。
「ただ・・・・」
「ただ?」
「嫌じゃ・・・無かった」
そう答えたっきり、ミカゲに背を向けるテイト、その耳は真っ赤に染まっていた。
「じゃあ、答えが出せそうになったら教えてくれ、例え、どんな答えになろうと、俺はお前の親友だかんな、忘れるなよ」
テイトの背に寄りかかりながら、いつものように強さを内包した声で諭すように言うミカゲ
テイトはあまりの出来事に首を縦に振るしか出来なかった
あとがき・どうも、皆さん07Ghostの小説第二段は前回の小説an Ordinary dayの後日談になってしまいました。本人的には、色々と妄想とネタ帳を整理していたら出来てしまった話ですが、今回の話は連載する予定の無かった話ですが、2話構成になってしまいましたが、意外と上手く言ったので、管理人的には嬉しく思っています。では、皆さん、これからも徐々に色々なコンテンツと小説を増やしていくのでお付き合い下さい