ヴァンパイヤ・ナイト・外伝

ヤマトは自分の前を走る。頭から麻色のフード付きのマントをスッポリと被って走る最愛の人、太一に向って

「待てよ、太一っ!」

と声を掛けるが、前を走る相手は止まる様子がない、それどろろか、どんどん高速移動のスピードをあげて、距離を取ろうとするが、ヤマトも太一に追いつかんと、高速移動の速度を上げる。

 

今、二人は日本を出てから、ある国のある地域に設けられた。その筋の人間がサンクチュアリ(聖域)と呼ぶ都市に住んでいる。この都市は一見すると、そこそこに発展しているだけの、普通の地方都市に見えるが、住んでいる住民の半分は、ヴァンパイヤなどの、人とは異なる種族であり、普通の人の中に紛れ込んで暮らしている。太一とヤマトが日本を出る事になり、この国のこの都市で暮らす様になり、それまでは色々と大変な事はあったが、穏健派のヴァンパイヤハンターギルドや、ヴァンパイヤ協会が、政府に働きかけ、この国のこの都市にヴァンパイヤなどの種族が住む事を黙認させる事に成功し、この都市には多数の人間とは異なる種族の者達が大勢住んでいる。

 

そして、生活も落ち着き、今日もヤマトは、ヴァンパイヤハンターギルド、ヴァンパイヤ協会の両協会から支給品の食材を積んで、週に一回やってくるトラックの中から、今日の晩御飯に必要な食材を貰うと、ヴァンパイヤ協会に与えられた家で待っている。太一、タケル、大輔の元に帰ると、玄関の扉を開けると同時に、家の中から勢い良く飛び出して来た太一とヤマトぶつかるが、太一はヤマトに目も暮れずに、走り出してしまった。すれ違う瞬間に垣間見た太一の顔は泣いている様に思えた

 

「お兄ちゃん!!」

家の中から出て来たタケルが、ヤマトに声を掛ける。その声を焦りに染まっており、事態が深刻であると悟ったヤマトは、

「どうしたんだ?タケル」

「分らない、僕と大輔君が、学校から帰ると」

ヤマト、太一、タケル、大輔の四人は、この地域に設けられた、特別に作られた学校に通っている。一応未成年であり、学校に通っていないと怪しまれる歳なので、特別に用意された学校である。この地域には、日本からの移住者が多く、クラスも日本人の子供ばかりで構成されているので、太一達四人は、日本出身の日本人の友達がすぐにでき、現在の学校生活にも満足していた。

 

「太一さんが、頭から布団を被って、部屋の済みでうずくまってて、話しかけても返事が無くて、どうしたんだろうって考えてると、突然、出ていっちゃたんだ。とにかくお兄ちゃん、追い掛けてよ」

「ああ、わかった。太一を連れ戻して、戻るから、それまで少し待ってろ」

ヤマトはタケルにそう言うと、買い物袋をタケルに押し付け、すぐさま高速移動を開始して、太一を追いかけて、今に至るのである。

 

「どうしたんだよ?太一!どうして俺から逃げるんだよ!?」

ヤマトは太一を路地裏に追い込み、太一の手首を捉え背を壁に押し付け逃げ道を封じる。

「・・・・・せよ」

「えっ?」

太一がヤマトから逃げられないと悟ると、小さな呟きを漏らすが、その声はあまりに小さく、ヤマトには聞こえなかった。

「放せよ!」

太一は一旦は大人しくなったと思ったが、すぐにまた暴れだす。

「どうしたんだよ!いったい!?」

ヤマトは太一の顔を正面から見据え、声を荒げる。ヤマトの声を聞き、蒼い瞳で見据えられてるのを知ると、太一は大人しくなり、ヤマトの顔を見つめる。

 

「ヤマトぉ」

太一の口からヤマトの名前が呟かれると、その大きな鳶色の瞳から涙が零れ落ちると同時に、太一はヤマトの胸に顔を埋めてきた。

「お、おい!太一、どうしたんだよ」

突然の太一の行動にヤマトは戸惑っていると、太一がヤマトの胸に飛び込んできた拍子に、太一の頭を覆っていたフードが取れた。そして太一の瞳の色同様の髪の毛の中にありえない物が生えていた。

「たっ、太一、ど、ど、どうしたんだよ?それ」

胸元からヤマトを涙を湛えた瞳で見上げてくる太一の頭には、茶色い猫の耳が生えていた。

「ヤマトッ!ヤマトォー!」

再び胸に顔を埋めて、泣き出した太一が、涙に濡れた声で、何があったかを語り出す。

「実は・・・」

太一の口から語られた事は、ヤマトの逆鱗に触れる物だった。

 

今日は恋人のヤマトが学校で、仲良くなった友達との勢いで始めたバンドの練習の為、先に帰っててくれと太一は言われた為、太一が学校帰りの道を一人歩いていると、後ろから突然何者かに襲われ、路地裏の人気の無い所に、連れ込まれてしまったのだった。そこで太一は獣人ワーキャット(猫人間)に噛み付かれてしまい、どうやら、血を吸われると同時に、ワーキャットの男に獣人の血を流し込まれてしまったらしいのだ。

 

「そんな事が・・・」

胸の中の太一を見ると相変わらず肩を震わせていた。

「太一・・・・太一」

優しく太一の名前を呼び、太一に顔を上げさせると、太一の涙に濡れた鳶色の瞳が、ヤマトの蒼い目と合った。ヤマトに言わせて見れば、猫の耳が生やし、涙に濡れた目で自分を見上げる太一を見るだけで、悩殺物なのだが、そこは辛うじて理性で押さえ込み、

「だいじょうぶだから太一・・・帰ろう」

ヤマトに優しく言われて、太一はコクンと首を縦に振ると、スッポリと再びフードを被って、ヤマトに引かれて家路についた。

 

ヤマトは、太一を連れ家に帰ると、待っていたタケルと大輔に夕食を作ってやり、それを食べさせると、自分達の部屋で大人しくしているように言いつけ、自分は太一と自分の相部屋に戻り、待っていた太一に夕食を乗せたトレイを部屋の隅っこで毛布を頭から被って、座り込んだまま黙っている太一の前に置くと、太一は毛布の隙間から、自分の前に置かれた物を確認すると、首を横に振っていらないの意思表示をする。

 

「太一、良いのか?」

ヤマトの問いに太一はコクンと首を縦に振り答える。

「分った。それじゃあ、行くぞ」

ヤマトは、太一に耳をなくす方法を家に帰ってきてから、説明しておいた。太一が再び声も鳴くコクンと頷くのを見ると、ヤマトは太一を抱き上げ、ベットに横たえらせ服を脱がし、自分も服を脱ぎ、お互いに全裸になると、ヤマトはヴァンパイヤとしての能力を開放する。

「はぁ〜」

口から吐息を吐くと犬歯が異様に伸び、太一の首筋に噛ぶり付く

「あっ・・・」

太一は自分の首を噛み付かれた衝撃に声を上げる。

「あっ・・・ああっ・・・」

太一の両手はヤマトの両手によって手首を捕まれ、抵抗する術を奪われ、太一は体をくねらせならが、嬌声にも似た声を上げる。

 

ヤマトは、太一の体に流し込まれた、獣人の血を吸い出すと同時に自分のヴァンパイヤとしての血を太一に流し込み、獣人の血を薄める。それにより、太一の頭に生えてきた耳が消えるのである。そして、いつの間にかヤマトの両手は太一の両肩を上から押さえつけ、太一の両手はヤマトの背に回され、強く強くヤマトを抱き締める。

 

「ふう〜〜」

ヤマトは額の汗を手の甲で拭うと大きく口から息を吐き、一息つく

「だいじょうぶか?太一」

「うん」

と言って頷く太一の顔は紅潮しており、耳はいまだ頭に生えたままだった。

「二、三日すれば、その耳も無くなる筈だ。安心しろよ、だいじょうぶだからさ」

太一の鳶色の髪をすきながらヤマトは言う

「うん」

そう言って答える太一は眠そうな顔をしており、目蓋を持ち上げようとしているが、睡魔の方が上だったらしく、眠りに落ちていく

「お休み、太一」

ヤマトはそう言って、太一の頬にキスを落とすと、改めて太一の顔を見る。

 

耳に茶色の耳を生やし頬を紅潮させ寝る太一の顔を見ると、不謹慎にも、何やら勿体無い事をしたという思いがふつふつとこみ上げて来てしまうのを理性をフル動因して押さえると、ヤマトも太一が寝ている布団に入ると、太一を抱き枕にし、ヤマトも眠りにつく

 

後書き・は〜い、この作品はちょっと特殊なんです。この作品は012345HITを踏んで下さった。つむぎ様に捧げた品ですが、まあ、いずれ書こうと思っていた。ヴァンパイヤナイトの外伝的なお話な為、一応サイトの方でもアップする事にしましたぁ〜